蔵元のECOな取り組み

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今年2008年は「京都議定書」の開始元年。また、7月に北海道で行われた記憶にも新しい「北海道・洞爺湖サミット」は、地球温暖化問題を焦点とした各国による議論が活発に交わされ、環境サミットとも呼ばれました。その旨から、2008年は“環境元年”と呼ばれています。
今日、酒類業界でも環境問題に関する様々な課題を抱えています。特に製造過程で排出される焼酎粕は、アルコール分解を経た芋・麦・米などの有機物と水分を90%以上含むもので、液状であることや重量があること、さらに特有の臭気があることから処理が難しいものでした。これまでは主に海洋投棄されていましたが、ロンドン条約に基づく環境保護の観点から、2001年より海洋投棄そのものが禁止されました。酒類メーカーではこの蒸留粕の処理が緊急の課題となり、海洋投棄に代わる新しい処理対策が考案・実施されています。
ここでは全国の蔵元の“ECO”な取り組みをご紹介します 。

焼酎粕リサイクルの仕組み

焼酎粕リサイクル図焼酎の製造工程で生じる焼酎粕を回収し、独自のリサイクル施設にて脱水ケーキ(焼酎粕を固液分離した固形分)加工後、乾燥・飼料原料化させ、家畜の肥料や堆肥として再利用されます。
また焼酎粕などを微生物によるメタン発酵処理を行い、発生したバイオガスを回収し電気や熱エネルギーに転換。
焼酎粕脱水ケーキ加工や、製造ラインのエネルギーとして再活用します。

国内最大級の焼酎粕処理施設を導入。1日に1万世帯1日分の電力エネルギーを回収!

霧島酒造株式会社(宮崎県)

焼酎粕処理施設とメタンガス貯蔵バルーンの写真年々焼酎の生産量が増加している霧島酒造。生産に伴う焼酎粕の排出量増に対応する為に、高温メタン発酵システム(メタクレス)を採用し、2006年には国内最大級となる焼酎粕処理設備を導入しました。
メタクレスの導入により、化石燃料消費量を大幅に低減。また発生したバイオガスエネルギーを回収し、燃料として再利用しています。
最大で1日に排出される400トン(!) の焼酎粕からバイオガス約20,000m3を回収し、併設された焼酎粕脱水ケーキ飼料化プラントの乾燥設備の燃料として使用されています。
バイオガス20,000m3から発生するエネルギーは、なんと1万世帯の1日の電力消費量に相当します!

環境にやさしい資源循環型企業を目指す。

株式会社紅乙女酒造(福岡県)

排水処理設備と蒸留粕処理工場の写真

紅乙女酒造は1986年に製造工場設立と同時に排水処理施設を設置。焼酎造りの際、原料となる麦や米を洗う時に発生する「とぎ汁」に含まれる微生物を分解し、きれいな状態で排水をしています。また工場付近河川の汚染防止のため、工場内の機械や道具、仕込みタンクの洗浄には全てお湯、または水のみを使用。
また2000年には蒸留カス排水処理を設備。国が定めた海洋投棄の禁止に伴い、中小企業ではいち早く設置しました。再資源化として牛の飼料や肥料に役立てています。

産業廃棄物の排出抑制・減量化に成功!焼酎粕の完全リサイクルを目指す。

大海酒造協業組合(鹿児島県)

密閉型焼酎粕タンクの写真大海酒造は工場に密閉型焼酎粕タンクを設置することで、異臭の発生問題を解消しています。また密閉型のため雨水・汚水・異物混入等の防止にも一役買っています。蒸留器と直結することで、経路洗浄水が不要となり、産業廃棄物の排出抑制率・減量化率の向上(年間14,000klを12,000kl以下に抑制可能)を図ることに成功しました。焼酎粕の腐敗を防止できる為、農地還元時の異臭を解消し、粕処理業者への委託をスムーズに行っています。また腐敗粕の分離、汚泥処理のコスト削減にもつながっています。
現在は特殊肥料としての商品販売を実施していますが、将来鹿児島大学で研究されている飼料としての有効活用が期待でき、有価物として販売する予定です。
またバイオ処理業者へ焼酎粕を提供し、焼酎粕の完全リサイクルが可能となります。

焼酎粕の飼料化・肥料化を実現。良質素材で海外への輸出も開始。

雲海酒造株式会社(宮崎県)

飼料化プラント.と飼料の写真

雲海酒造は、平成9年に焼酎粕を飼料に変える取り組みを開始。全蔵で年間に排出される焼酎粕の廃液はなんと4万トン!これらを綾町にある蔵の飼料化プラントで処理しています。この技術は平成16年に文部科学大臣賞を受賞。また飼料事業と同時に肥料化にも取り組み、完全リサイクルを行っています。畜産が盛んな南九州において家畜飼料として「雲海TMR」のブランドで有効に活用され、地域貢献の一翼も担っています。 雲海酒造の飼料は、良質で消化・吸収に優れており肉牛の発育に良いと評判を得ています。
平成16年には中国に飼料輸出を開始。畜産業者へ定期的に出荷しており、今後は韓国への輸出も開始する予定です。

メタンガス発酵処理によって泡盛蒸留粕のエネルギー有効利用を確立。

株式会社比嘉酒造(沖縄県)

バイオガスプラントの写真比嘉酒造は平成14年にバイオガスプラントを建設。工場の生産ラインから排出される泡盛蒸留粕や米洗汁をメタン発酵処理することで、電気・熱エネルギーに変換し有効活用しています。生産量が年々増加している泡盛。これに伴い、製造副産物である泡盛蒸留粕の排出量も増加傾向にあります。
これまで泡盛蒸留粕は、主に飼料(養豚)や液肥として利用されてきましたが、養豚業者が減少したことや、県内には施肥できる農地面積が限られていることにより、リサイクルしにくい状況にあります。このような中、泡盛蒸留粕は堆肥化や活性汚泥処理、焼却処理が行われているのが現状ですが、これらは全てエネルギー消費型の処理になります。 これに対し比嘉酒造が採用したメタン発酵処理では、泡盛蒸留粕を処理する際に発生するバイオガスを独自のシステムで電気、および熱エネルギーに変換。現在ほとんど利用されていない泡盛蒸留粕のエネルギー利用の確立と環境にやさしいシステムの普及を図っています。

美味しいだけじゃない!環境にもやさしい「もろみ酢」焼酎粕の可能性から誕生した「もろみ酢」

健康に良いことで注目が集まっているもろみ酢。皆さんは、このもろみ酢が、焼酎や泡盛の製造工程中に排出される蒸留残液から造られていることをご存知ですか?
現在では多数の焼酎・泡盛の蔵元で造られ、全国で広く愛飲されています。
ここでは蔵元が造るこだわりのもろみ商品を一部ご紹介!

もろみ酢の写真

【写真左より】 株式会社奄美大島開運酒造(鹿児島県) 『純 美酢』 900ml/田苑酒造株式会社(鹿児島県) さつまいも天然クエン酸飲料『もろみ酢』 720ml/株式会社比嘉酒造 『まさひろもろみ酢 黒糖はちみつ入り』 700ml/合名会社新里酒造 『もろみ酢(ストレート)』 900ml

徹底された環境汚染対策。緑化活動に取り組む。

三和酒類株式会社(大分県)

社外水路での漏洩訓練と緑化活動の写真

三和酒類では、製造過程のボイラーで使用される重油や洗浄用の薬品・酒類などの漏洩に備え、工場周辺に緊急対策として緊急遮断弁を設置しています。また、社外に流れ出る雨水経路についても土嚢等を用いて漏洩を防止する準備を徹底。更に2007年11月には、動式の水門仕切り設備を新設しました。
これらの設備を使用し、工場から排出される可能性のある汚染物質の漏洩訓練を定期的に行い、万一漏洩が発生した場合に被害が拡大しないように備えています。環境を配慮した取り組みに一切手を抜きません。

三和酒類は緑化活動にも取り組んでいます。
2002年からは、環境啓蒙の一環として、従業員による植樹祭へと規模を拡大しました。裏山の一部、約17,000m2に3年間で5,000本の苗木を植える計画で、2005年までに全ての苗木を植え、三和酒類の本社工場内に植えられた樹木は18,000本となりました。また毎年4月には新入社員による本社工場周辺への入社記念植樹を行っています。

工場から排出される廃瓶を琉球ガラスに再利用。

ヘリオス酒造株式会社(沖縄県)

廃瓶、ガラス製作風景と琉球ガラスの写真ヘリオス酒造では、工場から排出される廃瓶を沖縄特産の琉球ガラス(丸いフォルムに鮮やかな色使いが特徴の沖縄県の伝統工芸品)に再利用する取り組みをしています。
工場から排出される廃瓶は、最も多い時で年間なんと16.5トン!この廃瓶を何とかして再利用できないものかと考えた際、代表銘柄商品である古酒「くら」に使用する瓶が稲嶺盛吉氏(現代の名工)のガラス工房特有の泡ガラスに最適だというとことが判明。
それ以後、(有)宙吹ガラス工房 虹様に無償で瓶を提供しています。
現在、コストの面で新ガラスから作られることが多い中、廃瓶からできる琉球ガラス製品は減少しているとのこと。環境問題においてリサイクルが重要視される現代において、独特のガラス製法というだけでなく環境にも配慮した製品と言えます。

ヘリオス酒造は酒造りへのこだわりだけでなく、環境と地域文化を大切したいという企業理念を基に取り組んでいます。

焼酎・泡盛メーカーの3R(リサイクル・リユース・リデュース)活動

焼酎瓶・泡盛瓶のリサイクル図

メーカーの工場から毎日出荷される瓶を卸店や酒屋を通して回収し、工場にて選別・洗浄して再利用されています。
回収された物の中でも使用できないガラス瓶は、専門業者にて回収しガラス屑(カレット)にして、新規で瓶を製造する際の原料としてリサイクルされています。
また、瓶だけでなく、工場内の製造ラインで発生する不良容器、紙パックのリサイクルを実施するメーカーもあります。

以上のように、各蔵元が様々な取り組みをされています。
しかしここでご紹介した活動はほんの一部・・・ご覧になっても分かるように、蔵元はただお酒を製造するだけの企業ではなくなりつつあります。小さなことから率先して課題に取り組み、自然環境の保護に貢献したいという姿勢は素晴らしいものです。
しかし、蔵元が事業を運営するうえで取り組むべき課題は数多くあり、その模索への道はまだまだ続きます。

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