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造りの美学

麦焼酎 藤居醸造合資会社『感動を与える焼酎を目指して!』

蔵紹介

山、河と平野の織りなす田舎の風景

山、河と平野の織りなす田舎の風景。渓谷を駆け抜けてきた風は草木を揺らし、時折響きわたる鳥のさえずりが、静寂を快く解くそんな奥豊後の地に手造り焼酎で知られる「藤居醸造」はあります。

昭和4年(1929年)創業より「大分んもん」で地元の人たちに愛飲されてきました。三代目藤居淳一郎専務は、子供の頃から慣れ親しんできた“祖父の代から続く焼酎”を昔のままの伝統を守り、大切に育てようと完全手造りの焼酎造りを続けています。

蔵 人

三代目杜氏 藤居 淳一郎

三代目杜氏 藤居 淳一郎 様
41歳
大分県 ご出身

今回出迎えてくださったのは、専務兼三代目杜氏として麦焼酎本来の味の深さを追い求める焼酎造りを行っています。週末には全国各地への営業をひとりでこなすパワフルな方です。

レポーターの濱永社員

工 程

原料処理

180kgの麦を昔ながらの木製の桶を使用して蒸します。

木製の桶で蒸された麦

蒸した麦の塊を細かく広げて蒸し麦を冷さます作業を行いました。
蔵人の方々と協力してオールのような大きさのしゃもじで広げます。蒸しあがった麦は水分を多く含んでいるため、重量感たっぷりの力仕事です。麦の粒が立っていてぷっくりして美味しそうです。

蒸し麦を冷さます作業の様子

ココが美ポイント!

継ぎ目のない木製の大きなしゃもじや直径1m程の麦を蒸す際に使用している木桶、焼酎造りで使用している数々の木製の道具。現在では道具の製造・修理ができる職人さんは非常に少なくなっているそうです。また、木製の道具は衛生面で留意すべき点が多いのですが、手入れを繰り返して長年愛用しているそうです。「木以外の素材で蒸したときには、蔵の目指す焼酎麦本来の味わいが生れない!」ということで昔から製法で使用しているそうです。天然の風合いとぬくもりを感じる道具は味わいにも影響を与えるのでしょう。
継ぎ目のない木製の大きなしゃもじや直径1m程の麦を蒸す際に使用している木桶

製麹

こちらは室温30度を保つ麹室です。
「むろ蓋」を使った丹念な麹造りで仕込みが行われています。良質の麹が元気に繁殖できる環境づくりの為に、3回に分けて手入れを慎重に行います。麹造りの工程だけでおおよそ40時間かかります。

室温30度を保つ麹室の様子

初めての仲仕事(麹室に寝かせた麹の温度を冷ます作業)を体験しました。むろ蓋の麹をひと混ぜして四方より、中央に寄せて山を造ります。出来上がった山にくぼみをつけるという作業が一連の流れです。 藤居専務の手さばきを見ていると問題なくできそうでしたが、実際にやってみるとなかなかうまくいきません!ほんの5分経過した時には、室内の暑さと緊張感に全身から汗が噴き出てきました。本来、壁一面のむろ蓋を二人で作業して30分で仕上げるには1枚あたり20秒のスピートが要求されるそうです。

ココが美ポイント!

焼酎の出来を大きく左右する麹。麦の状態を香りで感じ、麦のまわりに付く麹に色を確認し、常に五感で感じ取りながら製麹をするそうです。瞬時に麹の状態を判断する職人の技を感じました。 麹造りで一番大切なことは温度管理だそうです。そのため麹室は杉の木で造られており、天井裏や壁には“もみ殻”を敷詰めており温度を一定に保つ仕組みになっているそうです。また、天井には高低差を利用した通気口もありました。当日の天候に合わせて温度と湿度の調整をしているそうです。 藤居専務は「自然の断熱材が一番です。湿気も調節してくれる」とおっしゃっていました。

一次・二次仕込み

麹の力で原料のでんぷんを糖質に分解、酵母菌を加えてアルコール発酵を促します。 一次仕込みでは麹と水、酵母を合わせて仕込みます。酵母菌の発酵が進むよう断熱効果がある甕(かめ)を使用し、その3/4は地中に埋め込み、もみ殻で囲っています。櫂棒を握り、一次仕込みタンク内を撹拌しています。温度の管理が目的ですが男性でも大きなタンクを均一にまぜるのはとっても大変な作業のようです。
二次仕込みでは仕込んだ一次もろみと水、蒸した麦を合わせて仕込みます。もろみがぷくぷく発酵している状態では香ばしい麦の甘い香りが立ち上がっていました。

一次・二次仕込みの様子

蒸留

麦一粒一粒の香りが十分に楽しめる様に藤居醸造の製品の主体は常圧蒸留です。
減圧蒸留した焼酎はブレンド用で使用しているそうです。

自家製常圧蒸留器

蒸留して最初に抽出されるアルコールがぽとぽとと出てくる部分は“初留取り(しょりゅうどり)” や“初垂れ(はなたれ)”と呼びます。焼酎の旨味成分がたっぷり凝縮され、本来は蔵人だけのひそかな楽しみの一杯だそうです。なんとアルコール度数60度!華やかな香りで、口の中でぱぁーと溶けていくパンチのある風味に感激しました!

常圧蒸留・減圧蒸留の説明 焼酎紀行 豆知識「蒸留」

ココが美ポイント!

藤居専務は「蒸留で味が決まる」とおっしゃいました。”首”と呼ばれる部分の長さなど試行錯誤を重ねて改良を施した「自家製常圧蒸留器」は独特の風味を造り出します。蒸留器は蔵の宝物です。常圧蒸留にこだわり、麦の風味を最大限に引き出すことに全力を尽くす蔵の心意気を感じました。

ろ過

原酒の貯蔵タンクを覗いてみました。
はしごを使って登る貯蔵タンクの中には焼酎がたっぷり詰まっています。タンクの大きさにもびっくりしました!
原酒の表面にはフーゼル油が浮かんでおり、麦の香ばしい香りがとても美味しそうです。こちらの原酒からフーゼル油を取り除き、ろ過フィルターを通して不純物を取り除きます。 

貯蔵タンクを覗き込む濱永スタッフとろ過フィルター

ココが美ポイント!

フーゼル油をそのままにしておくと焼酎の風味や香りが損なわれます。しかし、この油を適度に残すと焼酎に豊かな風味が加わります。ろ過の具合で原酒の風味をどう生かすのか、ブレンド、割り水で度数をどれぐらいに調整するのか。ここにも長年の経験による腕の見せ所がありました!!

熟成

ずらっと並んだタンクは圧巻です!一定期間貯蔵して熟成します。この期間に静かにゆっくりと原酒が熟成していきます。焼酎の味にまろやかさが生まれる秘訣です。

甕(かめ)にて3年間という月日の中で熟成させる「じいさんの置きみやげ」は美濃焼の甕に詰めて蔵出しする冬季限定商品です。

通のための麦焼酎「じいさんの置きみやげ」 について
焼酎紀行 焼酎検索 「じいさんの置きみやげ」

ずらっと並んだタンクと美濃焼の甕

精製びん詰

竹田湧水の割り水でアルコール度数を調整した焼酎を瓶に詰めます。

焼酎を瓶に詰める様子

打栓後、製品にラベルを貼り、移動する作業を行いました。「無農薬 自然麦」がこんなにたくさんできました。この後、肩ラベル、和紙で包み、ひもを巻くという気の遠くなるような作業ですが、機械に頼らない分一本一本に愛情を注ぎ込んでいるのだなと思います。
出来上がった製品をみて「美味しく飲んでもらえよ!!」とやさしく熱く語りかける藤居専務。造りの喜びを感じる幸せな瞬間でした!!
焼酎紀行 焼酎検索 「無農薬 自然麦 1800ml」

箱詰めの様子

販売所と番外編

工房「井田萬力屋」
昔は倉庫だった建物を改築して、木をふんだんに使用した落ち着きのある雰囲気の工房は販売所兼交流スペースとして整備されていました。 焼酎を囲みにぎやかな会話が今にも聞こえてきそうな温かい建物となっていました。

工房「井田萬力屋」の様子

インタビュー/コメント

造りの美学とは「飲んだ人に感動を与える焼酎を造ること!!」だと思います。藤居醸造らしい飲みごたえのある焼酎造りをして、一度飲んだ人がまた飲みたいと思って頂けるようなそんな味わいを心掛けています。「焼酎は嗜(し)好品であるが、飲んだ方にとって必需品」と言われるような焼酎を造りたいです。
今後は生産者・製造者・小売店さん、携わって下さる方、皆の顔が見える焼酎造りにより一層取り組みたいと考えています。

藤居醸造合資会社
藤居醸造蔵元だより

取材感想:「ナンバーワン」ではなく「オンリーワン」と誇らしく語られる藤居専務の姿が印象的でした。木桶で麦を蒸し、一枚一枚むろ蓋で気持ちを込め製麹する麹造り、様々な造りに使用する道具には昔の人の知恵が詰まっているから今でも昔の造りを続け、道具を大切に使用している」とのお話を伺いました。古の伝統を守り続ける姿への尊敬と私自身も日々の生活の中で物を大切にする気持ちを大事にしたいなと思いました。1日の密着取材でしたが商品が形になったときの感激は今後忘れることができない喜びです!!お忙しい中、取材に応じて下さった藤居醸造の皆様、ありがとうございました。レポーター:濱永