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造りの美学

米焼酎 繊月酒造株式会社『100余年の歴史。変わらぬ味と新たな味を求め続けて・・・』

蔵紹介

会社・蔵 概観

繊月酒造は熊本を代表する球磨焼酎メーカーです。球磨焼酎とは、米のみを原料として、人吉球磨の地下水で仕込んだもろみを、人吉球磨で蒸留し、びん詰めしたもので、スコッチウイスキーやボルドーワインのように、球磨焼酎は地名を冠することを世界的に認められているブランドです。

蔵は風情のある城下町に囲まれ、蔵のすぐそばにはとてもきれいな球磨川の支流「胸川」が流れています。 創業は明治36年。100余年の歴史ある蔵元です。

蔵 人

六代目杜氏 馬場 祐次

六代目杜氏 馬場 祐次 様
46歳
熊本県 ご出身

今回繊月酒造の造りをご紹介頂いたのは、六代目杜氏の馬場祐次さん。造りに対する真剣な眼差しには熱いものを感じます。

レポーターの白井社員

工 程

原料処理

米を水洗い・浸漬後、自動蒸米機で米を蒸して適度な温度に冷まします。次工程の製麹作業で、麹菌を原料米の芯までまんべんなく繁殖させるためには、原料米の蒸し加減は最も重要だそうです。もちろん原料は国産米のみです。

自動蒸米機

蒸しあがった米は、まるで焼きたてのおせんべいのような香ばしくも深みのある香りがします。これがやがて焼酎になるなんて…不思議です。

製麹

蒸しあがった蒸米をこの大きな回転ドラム内に移し、麹菌を加えドラムを回転させます。こうすることで麹菌が蒸米にしっかりと付着し、良質な米麹が出来上がります。

大きな回転ドラム

米麹を安定して造り出すため、温度や水温、室温などをコンピュータで管理するようにしています。いくら正確なコンピュータといえども様子が気になり、30分に1回はコンピュータを覗きに来てしまうんだとか。「頭の良い機械でも、いつ不具合が出るかは分かりません。その点も私たち生き物と一緒なんです。」と馬場杜氏。まるで子を思う親のようですね。

温度や水温、室温などをコンピュータ

一次・二次仕込み

製麹で出来上がった米麹に、仕込み水と酵母を加え、約1週間熟成させます。これを一次もろみと言い、その見た目はまるでお豆腐のようです。

製麹で出来上がった米麹の様子

この一次もろみに掛け米と仕込み水をさらに加え、二次もろみを造ります。櫂棒という棒で、中身がよく混ざるようにタンク内をかき混ぜます。私も実際にこの作業にチャレンジ!力の入れ方や体の動かし方が難しく、ぎこちない動きをする私の姿を見かねたのか、馬場杜氏から「男性でも一度や二度で出来るものではありません。私も若い頃はこの作業に朝から昼まであたり、手のひらはマメだらけで、毎日が筋肉痛でしたよ。」とフォローを頂きました(笑)馬場杜氏のおっしゃるとおり、これこそが長年の経験からなせる職人の技なのでしょうね。仕込みは深夜でも当直をつけて管理するそうです。休む暇はありませんね。

二次仕込みの様子

ココが美ポイント!

櫂棒の一本一本は杜氏や蔵人さんの手作りです。櫂棒は竹で出来ており、その長さは私の背丈の3倍はあります!持つだけでも一苦労です。自分が使う道具は自分で作る!これが蔵人のルールとのこと。朝から昼まで櫂棒をひたすら動かし続けるなんて…造りの苦労を感じます!
100%国産の和甕

蒸留

発酵の具合を見て、二次もろみを蒸留器へと移します。繊月酒造のレギュラーブランド「繊月」は減圧蒸留によって生まれます。蒸留された原酒は、少しずつ量を増していき、タンク内をキラキラと輝かせます。タンクを触ると、蒸留されたばかりの原酒の温かさを感じます。まさに“焼酎の赤ちゃん”といった感じです。

蒸留器

私が手にしているのは「ババ」と書かれた馬場杜氏専用のうちわ。蒸留中はサウナのようになるこの場所では必需品です。馬場杜氏がつきっきりで蒸留場所にいるのが想像できます。

馬場杜氏専用のうちわ

ろ過

炭素ろ過機

蒸留された原酒にはフーゼル油という原料米から出る油が残っています。これを取り除くために、冷却装置で原酒を冷やし、油を固めて取り除くそうです。
フーゼル油を取り除いた原酒はさらに浮遊物を取り除くため、炭素ろ過機へ通されます。このろ過機は10枚のフィルタから出来ており、原酒がこの中を通ることで、雑味の無い味へと生まれ変わるそうです。

熟成

土甕貯蔵
繊月酒造には三代目杜氏の頃から熟成している原酒があり、その貯蔵年月は30年以上にもなります。この古酒は繊月酒造の財産のひとつになっています。創業当時からある旧工場の「大手蔵」は蔵付近の道路拡張の為、2009年8月に取り壊すそうです。(取材日:2009年7月)その代わり、現工場の敷地内に和甕と古酒を保存するため、新しい蔵を建てています。

旧工場

樫樽貯蔵
本社から車で数分の所に樫樽貯蔵をしている蔵があります。その名も「繊月酒造土手町蔵」。中に入るや否や、その樫樽の多さにびっくり!250本もの樽と、奥にはホーロータンクが27本あります。思わず足が立ち止まり、圧倒されてしまいました。本社工場の蒸し米や焼酎の香りとは違い、樫の香りが蔵全体を覆っているかのようです。

繊月酒造土手町蔵内

ココが美ポイント!

■ 土甕貯蔵
新しい蔵の中では、旧工場「大手蔵」から移動された和甕たちが粛々と土に埋まっています。新居となったこの蔵で、30年以上守り続けられた原酒が、また新たな時をここで刻むのでしょう。土の香りが厳格な雰囲気を漂わせます。
和甕

■樫樽貯蔵
これはトンボ尺といって樽の中の焼酎の容量を測定するものです。これも馬場さんの手作りです。このような道具一つ一つにも杜氏の計算された技と知恵が詰まっています。

トンボ尺

精製びん詰

しそリキュール「恋しそう」は女性向けに開発された繊月酒造唯一のリキュールです。今回は特別に「恋しそう」のラベル貼りも手伝わせて頂きました。見た目はもちろんのこと、それを梱包する外箱やガムテープまでもがピンク!女性なら誰もが目に留まりそうな、優しい色ですね。

スタッフの方は手馴れた手つきで作業しているようですが、よく見るとラベルの位置や角度などを正確に測りながら作業しています。私もそれを教わり、慎重にゆっくりと作業します。「”恋しそう”がお客様の目に留まりますように!」スタッフの方とそう願いながら…

ラベル貼りの様子

販売所と番外編

足湯
本社工場の敷地内には足湯があります。元々ここは社長の車庫だったようですが、見学にいらっしゃる方や地元の方の憩いの場になればと、温泉を引いてわざわざ作られたそうです。

足湯

焼酎を造るための昔の道具たち
今は使わなくなった道具ですが、焼酎の歴史を形に残し、広く知ってもらうために工場の入り口に飾ってあります。実際に手にすることもできます。

焼酎を造るための昔の道具たち

試飲・販売場
瓶詰め蔵の二階にある部屋では、実際に繊月酒造商品を味わうことができます。もちろん試飲後の購入も可能です。
取材中は平日にも関わらず、ひっきりなしに観光客の方がお見えになっていました。一日平均300人の観光客が蔵の見学に来ているそうです。

試飲・販売場

生け花
蔵のところどころに社長の奥様が生けた花があります。蔵を訪問される方のために毎日生けているそうです。このちょっとした気遣いも地元の方に愛される理由になっているのでしょうね。

生け花

インタビュー/コメント

繊月酒造では創業当時から、杜氏と蔵子を置いて、しっかりとした生産体制を敷いています。先代の杜氏は口数も少なく、「見て覚えろ」が口癖で、造りを習得するのには苦労をしました。その中でも、「良質な麹造り」、「徹底した温度管理」は社訓の様にして現在まで受け継がれています。

麹やもろみといった、焼酎を造り出す生き物と接する仕事は、毎日変化に富み、やり甲斐を感じます。 これからも、飲む人が気持ち良く酔い、幸せな気分になれるような焼酎を造っていきたいです。

繊月酒造株式会社

取材感想:馬場杜氏の「機械も私たち人間と同じ。焼酎を精魂こめて造り出すことには変わりありません。」この言葉がとても印象に残っています。大量生産・大量消費が当たり前になった昨今ですが、昔と変わらない味を守り続けるのはとても大変なことだと感じました。また、機械では出来ない作業も数多くあり、焼酎は人間だけでなく麹菌や酵母などの生き物と共に造り出すものなのだと改めて実感しました。蔵には杜氏、蔵子さん以外にも繊月酒造を支えるたくさんのスタッフの方がいらっしゃいました。皆様とても温かく接して頂き、ますます繊月の魅力にはまってしまいました。私たちが日頃手にしている焼酎は、たくさんの人の手とその想いから出来上がっているのだとしみじみ感じます。焼酎ファンの一員としてここで学んだ焼酎文化を大切にし、一杯一杯を大切に飲んでいきたいです。レポーター:白井