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【お蔵探訪記】河津酒造に行ってきました

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九州の中央部、世界最大級のカルデラを持つ阿蘇外輪山の外側にあり、筑後川の上流に位置する小国町は、豊かな緑と清冽な水に恵まれた土地です。
夏は涼しく冬は厳しい高冷地帯に、河津酒造はあります。

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取材時はちょうど梅酒造りの最盛期でした。
福岡にある自社農園に社員総出で出向き、全て手摘みで収穫。
梅のヘタとりなども全て手作業で処理し、少しでも傷みがあるものは取り除きます。
下処理を終えるとアク抜きをして、乾かした後に仕込に入ります。
梅酒は自社醸造の清酒で度数が20度程ある「あきげしき原酒」を使用。
清酒の香りと梅の香りがうまくマッチングし、口の中にからむような商品になるよう選んだ結果が、少し辛味のある日本酒を梅酒造りに使用する事でした。

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「ここまでやらないといけないの?」と丁寧な工程を見て言われる事がありますが、見た目、味、出来上がりに影響するために手を抜くわけにはいきません。とおっしゃる河津社長。
そうやって造りあげられた梅酒は、とても澄んだ琥珀色をしています。
右は瓶貯蔵で1年たった梅酒。色が濃くなっています。

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こちらは精米機。原料米の精米も自社で行っています。
また、精米の際に出た米粉を圧縮して無添加の石鹸を作って販売しています。
右は酒粕です。この酒粕は自社にて販売している他、地元の漬物屋さん等に納入。
酒造の過程で出た二次加工品も無駄にしない。
お酒をお買い上げ頂いたお金を、来年のお米を作る費用に農家さんへお戻しする。
正当なお金のサイクルを守る事を大事にしています。

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こちらは甑。
この上で米を蒸します。現在は移動式の甑が多い中、こちらの甑は昔ながらの地中に埋まったタイプ。

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こちらは麹室。ここで蒸した米に麹菌植えていきます。
中には麹室が3つあるそうです。もちろん蔵人さん以外は立ち入り禁止。
蔵に居る酵母はとてもデリケートです。
右は醸造されたもろみが入ったタンク。

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こちらは「槽(ふね)」と呼ばれる、もろみをしぼる道具です。
この浴槽のようなところにもろみの入った布袋を一つ、二つ、と重ねていくことで、自然に圧力がかかりもろみが絞られるようになっています。
そして、最終的には、上から圧力をかけて搾ります。
この槽しぼりを行うところは、九州では極わずか。2社程しかないそうです。
また、天井を見ると、「槽」の形に合わせて天井に麹菌が住み着いているのがわかります。珍しい光景ですね。

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河津酒造さんでは、瓶詰もラベル貼りも全て手作業!
作業台は障子の敷居をリサイクルして作ってあるそうです。古い建材を大事にリサイクルする。その姿勢は、道具だけではなく、倉庫や社員さんの使用する食堂にも表れています。
倉庫は、古くなった小学校の体育館の木材を使用してあり、食堂の壁には、木桶をばらした物が使用されていたり。
古い物を大事に使う、という姿勢がとてもよくわかります。

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この樽の中には、出荷の時を待つ焼酎が眠っています。
清酒はもちろん焼酎の原料もほとんどが地元で生産されたもの。
芋・米・麦のほか、とうもろこしや、小国産の“菊芋”を温泉水で仕込んだ、地元の名産品を使った焼酎もあります。
小国では水道水も湧水を濾過したものを使用しているほど水資源は豊かで、また、野菜なども密度が濃いのだそうです。酒の原料も、きっと味が濃いのでしょうね。
商品の裏ラベルには、生産者の方のお名前も掲載されていました。

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河津社長のお話を伺いました。

東京でIT関連の会社に勤務していましたが、数年前に小国町へ帰郷し会社を継ぎました。
過疎化で地元の消費が減っている中、販路を広げるにはまだまだ設備・造りの基盤を整えている途中です。
造ったから売るのではなく、売りたい量を仕込んで売る、というスタンス。
小国は一日の気温の差が激しく、造りにはとても気を使います。
シンプルに美味しいと思える酒をまじめに造る、ベースになる味は守っていきます。
ですが、その時のトレンドに敏感に、大事なところは守り、変えるところは変えて新しい味を作っていきたい。
評判のいい酒があれば、取り寄せて飲み比べ研究しています。
トライ&エラーで進んでいくしかありません。
トレンドに乗ると言っても、実際商品として出すには、米作りから酒を造るまでに2年かかるので、常に2年後を見越して酒を造り、その時のトレンドに合うお酒を提供したい。

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清酒は日本酒度「+(甘い)」「-(辛い)」で表されますが、日本酒初心者の方は甘辛の判断がつきにくいですし、±0でも甘口に分類されたりとわかりにくいです。
そこで、「入口」の人々の心をつかむ「振り切った甘口」という新しいジャンルに挑戦し、極端に甘い商品を造ったのが、「花雪」という商品。
通常の日本酒は3段仕込みですが、この商品は4段仕込で造っています。女性におすすめしたい逸品です。
右は新作のお酒ですが、原料はもちろん、外の木箱も小国産の小国檜を使って特注したもの。
触るととても滑らかで、いい香りがしました。

小国の町の豊かな自然の中、地元のものを地元で加工し発信していく河津酒造。
伝統をしっかり引き継ぎながらも、手づくりの小規模な蔵だからこそできるチャレンジ精神。
日本酒の新しい息吹を感じました。

お忙しい中、取材にご協力いただき、ありがとうございました!

■河津酒造株式会社
■住所:熊本県阿蘇郡小国町大字宮原1734-2
■電話:0967-46-2311
■HP:http://www.kawazu-syuzou.com