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【お蔵探訪記】老松酒造に行ってきました。

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2015年11月、大分県日田市、老松酒造に行って参りました。

老松酒造株式会社 大分県日田市大鶴町2912

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蔵は、周囲を山々に囲まれ、「水郷日田」として知られる水の郷にあります。
創業は、1789年。
現在、モンドセレクション連続受賞の麦焼酎「閻魔」が代表するように長期貯蔵の技術に長けた蔵元として知られていますが、その歴史は清酒造りからはじまりました。
筑後川上流、三隈川から流れる日田の名水で芳醇な酒造りをしていきた老松酒造では、何よりも水を大切にしています。

水によってお酒は全然違う。水が非常に大切なんです。

そうお話ししてくださったのは、平川部長。

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蔵の入口には、昔からの手掘り井戸が今も残っていました。
どちらも手掘りで深さは20mにも及びます。今は涸れてしまいましたが、長年老松酒造の酒造りを支えてきました。
その井戸を、そして蔵を見守るように、蔵の入口では、可愛らしい閻魔様と荘厳な龍と虎の漆喰装飾が出迎えてくれました。

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まずは老松酒造としての造りへのこだわりを教えていただきました。

蔵で培われた伝統を造り手がきちんと引き継いでいくことが重要です。
どんなにオートメーション化が進んだとしても、「ここ」と言うところはやはり人の力が必要です。
杜氏が変わると味が変わります。先代から引き継ぎ、もちろん味は似ていますが何年かしてくると違うものが出てきます。一人一人、見ているところが違います。

その違いを良しと捉えるか、悪しと捉えるかはそれぞれですが、これからのアルコール業界全体の向上のためにも、品質を上げていくことは非常に重要です。

今は、どのような作用がどう影響するかという情報は豊富にあります。
機械化も進んでおり、味のバラつきはある程度抑えることができます。

そういう情報や技術を習ったり、教えたりと蔵元同士の横のつながりが必要だと思います。

もちろん、同じ造り、同じ原料でも蔵によって、全然違います。同じものはできません。
人、気候、風土が影響を与えます。技術、情報を交換し合いながら、お互い切磋琢磨し、良いものを造り出していくことが求められていると思います。

そのお言葉より、長年酒造りを行ってきた蔵元が持つこだわりと、大手蔵元として担うべき責任の重さを伺い知ることができました。

次に、焼酎蔵の中を見学させていただきました。

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まずは、大きな製麹機。
老松酒造のこだわりの一つが麹造りです。繊細な清酒造りの技術が生かされた麹造りが行われています。
この大きな製麹機の中で、2日かけて造られる麹は、1回に約11t。ちょうど見学させていただいた時は、蒸しから冷ましに入っており、あたり一面蒸気に包まれました。

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そしてこちらは蒸留器。
蒸留の一番最初に出てくるハナタレ(初留)は非常にアルコール度数が高く、徐々に40度近くまで度数が下がります。そこに割り水をすることで、20度、25度など度数を調整します。
今回は、減圧蒸留したてのハナタレを頂くことができました。アルコール度数が60度近くあり、度数の高さを感じましたが、非常に香りが高く、味わいもフルーティ。まさに出来立ての味を味わうことができました。

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こちらは、瓶の詰めライン。瓶のラインでは、年間に1万8千石、なんと一升瓶で180万本もの商品が瓶詰めされています。
1.8Lの瓶では、1時間に約1300本以上瓶詰めされており、今もまさに焼酎が詰められ、異物が混入していないか、入念なチェックが行われていました。

休日以外は毎日瓶詰めがされているそう。老松酒造の規模の大きさがわかりますね。
それだけの本数を詰めるからには、お酒の量も大量です。貯蔵タンクは、500Lタンクから最大180KLタンク(一升瓶10万本分)まで全部で300~400本もあるそうです。すごい規模ですね。貯蔵タンクの多さも然ることながら、敷地内にはいたるところに樽が置かれていました。さすが熟成焼酎の老松酒造です。

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中でもその象徴ともいうべき樽貯蔵庫には圧巻そのもの。とても大きな建物内に、奥まで見えないほど所狭しと樽が並んでいます。
この貯蔵庫の最大の特徴は何だかわかりますか?

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そう、樽が全て縦向きに保管されています。
通常は横向きに保管されますが、横向きにすると専用のラックが必要になり、場所をとるためあまり積むことができません。スペースを最大に効率的に使うため、樽も縦型用に特注で作ってもらっているそうです。

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この貯蔵庫には、製品化用の樽と、寝かせる目的の貯蔵樽と約2500本もの樽があり、最も古い貯蔵樽で8年間貯蔵したままの樽があるそうです。
新旧の貯蔵酒を、味わい、色合いを見ながらブレンダーが巧みにブレンドし、製品が出来上がっています。貯蔵年数だけではなく、樽そのものの使用年数も異なるため、非常に味の調整が難しく、ここに老松酒造のブレンダーの皆さんの熟練の技が光ります。

そして、蔵の横に広がる広大な畑。
ここでは、契約農家さんが焼酎の原料となる麦を栽培しています。一年を通して、お米、麦、野菜と栽培をしています。

今後は、日田産のお米にこだわった商品を造りたい。

日田の地への愛情と、新たな製品づくりの意欲を伺うことができました。

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日田の水にこだわり、原料にこだわる。
そして古くから引き継がれてきた伝統と熟練の技。
お酒というのは、原料、水、人が生み出しているものなのだと再認識することができました。

最後に、老松酒造の皆様、お忙しい中、取材ご協力いただき、有難うございました。これからも長期樽貯蔵焼酎の第一人者として、情熱とこだわりを持ってお酒を造り続けて頂きたいです!