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【お蔵探訪記】天吹酒造 ~その2.造りへのこだわり~

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続いては、天吹酒造の造りの工程に注目してみました。

10月から3月は特定名称酒、特に1月から2月前半は全て大吟醸系の仕込みをされています。
訪れた日は、40%まで磨いた酒造好適米「雄町」を洗米している真っ最中でした。秒刻みでの管理を行いお米を洗います。掛米に使用するお米は洗米機を使用し、麹米は全てザルを使用し手作業で洗米するそうです。

洗米作業

大吟醸系は全て、昔ながらの槽搾り(ふなしぼり)。こちらの搾り機は上から圧力をかけることで、ゆっくりとお酒を搾ります。

槽搾り

そして麹造りに使用される「もろ蓋」。

もろ蓋
もろ蓋

 

底に見える板は5cm間隔で配置され、誰でもきちんと温度管理ができるように作られています。麹造りは温度管理が非常に重要です。初めは5cmの枠内に入れられた麹を、温度上昇とともに、枠を10cm、15cmと広げ、麹の表面積を広げることで温度管理をしていきます。
麹を造るために使用する「種麹菌」は非常に優秀であり、温度帯で造られる酵素が変わるそうです。天吹酒造では、目指す酒質に応じて、6種類の種麹菌を使用し、温度・時間管理を行っています。

昔は、普通酒から吟醸まで同じ種麹菌を使い、技で造り分けてました。どんな飲み方をしても美味しいお酒が、「美味しいお酒」とされていましたが、今は「お燗にするのに美味しいお酒」、「冷酒で美味しいお酒」と分かれてきています。
なので、お燗、冷と飲み方の温度帯に合わせた酒質となるように造っています。

そして天吹酒造のもう一つの特徴と言えるのが、瓶貯蔵の多さです。こちらの貯蔵庫には吟醸系のお酒が全て瓶詰めされ、貯蔵されています。

貯蔵庫

日本酒を造る工程の一つである貯蔵。多くの蔵元は、貯蔵する際にタンクを使用し、製品として出荷する前に瓶詰めをします。そのため、火入れという殺菌を2回行う必要があります。
対して、瓶貯蔵は火入れ回数が少なくなるため、より性質の良い状態を保つことができます。
しかしそこで問題となるのが保管にかかるスペース。同じ量のお酒を保管するとしても、タンク貯蔵に比べ、瓶貯蔵は非常にスペースを必要とします。蔵元にとっては大変である一方で、できる限りフレッシュな状態で味わって頂きたいという想いで瓶貯蔵を行っています。大吟醸については、2年もの貯蔵期間を設けて出荷しているそうです。

このようにお客様を第一に考え、触れ合いを大切にするため、蔵開きとは別に、年に一度大試飲会を実施されています。
その一番の目的は、お客様の声を作り手の皆さんに直接聞いていただくこと。

「美味しいという」声を聞くと蔵人の皆さんも今年一造り頑張って良かったと実感できるそうです。
時にはいつも愛飲される方から「去年の方がよかった」という厳しいお声を頂くこともあるそうですが、やはり生の声が一番ありがたいこと。

お客様はもちろん、お酒造りにかかわる全てに真摯に向き合う姿がとても印象的な蔵元です。
今回、蔵を訪問させていたでき、日本酒はお米、水はもちろん、酵母に麹菌と様々な微生物の働きによって造られているということが実感できました。

最後に、天吹酒造の皆様、お忙しい中、取材ご協力いただき、有難うございました。
これからも、新しく、時には面白い「花酵母」で、美味しいお酒を造り続けていただきたいと思いました。

【お蔵探訪記】天吹酒造 ~その1.花酵母の魅力~ はこちら