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【お蔵探訪記】玉乃光酒造に行ってきました。~その1.蔵のこだわり~

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2016年2月、京都市伏見区、玉乃光酒造に行って参りました。

玉乃光酒造株式会社 京都市伏見区東堺町545-2

創業は1673年(延宝元年)。日本三大酒処として名高い伏見の地で、「純米吟醸」にこだわりお酒を醸している蔵元です。

玉乃光酒造外観

酒造りに欠かせない水。京都伏見は、「伏し水」が語源と言われるほど、地下水に恵まれており、蔵では、桃山丘陵を水源とする伏し水を使用しています。
また、蔵の周りには滋賀の琵琶湖と京都、伏見、宇治川を結ぶ琵琶湖疏水(そすい)が巡っています。整備された土地でも、地下水が滲み出てきており、その豊富さを見ることができました。

伏見の地下水

水、歴史に囲まれた町並みを行くと、見えてきたのは、築100年以上の立派な蔵。3棟からなる蔵の一番手前に見える一際大きな棟は、造りのメインとなる棟で2階建てになっています。

玉乃光外観

昔ながらの少し急な階段を上ると、そこに広がるのは、麹室と蒸米の作業場。そして奥には、醪の入ったタンクの入り口が覗ける作業場があります。2階で蒸したお米を、人の手やパイプを通して効率良く一階に設置されたタンクに投入できるように造られた先人方の知恵が生かされた造りになっています。

こちらでは、純米吟醸、純米大吟醸のみ、というこだわりの酒造りをしています。もちろん、昔はその他も製造していました。しかし、普通酒や三増酒の製造まっさかりであった時代に、先々代が「安いお酒は造らない。手間はかかるが昔からの方法で仕込んで行こう。」という方針を掲げました。そして、徐々に体制を整えていき、3年前、完全に純米吟醸以上のお酒のみを造る蔵となったそうです。

さて、玉乃光酒造ではどのようなお酒造りがされているんでしょうか。辻本生産部長と平田営業部長に蔵の中をご案内して頂きました。

まずは、日本酒造りの最前線とも言える精米から。
玉乃光酒造では、「責任を持てる精米」を掲げ、自社で精米をしています。その理由は、一粒一粒きちんと磨かれたかを確認するため。そしてもう一つの理由は、生産者の方へお米の良し悪しをお伝えするため。生産者の方によってもお米の性質は異なります。精米機の出口には、お米の種類と生産者の方の名前も掲示され、精米の具合をきちんと確認しています。

精米

こちらでは、社員の方達も田植えに参加するほど、お米にこだわり、生産者の方々と密着しています。お互いの信頼関係があるからこそ、より良いお米とお酒が造れるのだと感じます。

精米機の中にある大きな砥石
精米機の中にある大きな砥石

そして、洗米作業へ。

給水具合を確認
給水具合を確認

こちらは、45%磨きの洗米中。通常地下水温は13度前後ですが、あえて水温を8.8度まで落として洗米をします。それは、温度が高いとお米が水を吸いやすく、磨いたお米は急に吸水すると割れやすくなってしまうため。45%まで磨いたお米は特に割れやすく、細心の注意が必要となります。
細かいロットで吸水具合を確認し、一つ一つの作業を秒単位で管理するため、蔵内には秒を読み上げる大きな声が響き渡ります。

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まだ透明部分が残っており、給水は十分ではありません。
洗米されたお米は、翌日蒸されるため、こちらのお米は明日蒸米となります。

洗米後

そして、こちらが前日に洗米されていたお米。しっかりと白くなっています。
ちょうど朝一番の蒸米ができたところ。冬の寒さが際立つ蔵の中で、勢いよく蒸気が立ち上がり、蒸し立てのお米のとても良い香りが辺り一面に広がっていました。

蒸米

この日は麹米、掛米合わせて2,330キロのお米を4回にわけて蒸す予定。麹米だけでも、お米の種類や、精米歩合、また仲麹、添麹など使用する用途が違うため、甑の中は、何層にも分けられ、一度に数種類のお米を蒸していきます。

蒸米作業

お米の蒸し上がり具合の確認ももちろん重要。固すぎると麹菌の菌糸がお米に入りづらくなるので、固くなる前に麹菌を蒔かなければなりません。蒸米の具合がその後の麹造りの工程にも影響するため、ここでも経験が重要となります。

純米大吟醸用の麹米は、乾燥具合も重要になるため、放冷機を使わず自然に冷まし調整します。そのため蒸し上がったお米を麹室の前まで一人ひとり担いで運んで行きます。早朝にも関わらず蔵人の皆さんの動きは俊敏です。

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手作業で蒸し上がりの熱々なお米を広げていきますが、全身を使っての勢いのある作業に、ただただ圧倒されるばかりです。

蔵人の皆さんが力を合わせて造り上げている姿がとても印象的なシーンです。

そして、次はお酒造りの要「麹作り」へと続きます。