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【お蔵探訪記】北川本家に行ってきました。

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2016年2月、京都市伏見区、北川本家に行って参りました。

株式会社北川本家 京都市伏見区村上町370番地の6

代表銘柄は「富翁」。日本酒をメインに焼酎、リキュールを造っており、全国新酒鑑表評会で16回も金賞受賞をした伏見の老舗酒蔵です。

受賞賞状

■様々な変革を遂げてきた老舗蔵

北川本家の創業は今からおよそ360年前の1657年(明暦三年)。当代で14代目という、酒処伏見でも屈指の老舗酒蔵です。

当初船宿を営んでおり、そのお客様にふるまうお酒を造りだしたことが始まりです。現在確認できる最も古い文献には、83軒の蔵の名が記されていましたが、現存するのは、北川本家と月桂冠(株)の2つの蔵のみ。伏見の中でも群を抜いた歴史の古さを伝えています。

北川本家の特徴は、こだわりのお酒と手ごろなお酒と大きく2つの柱があるところ。
昔は、杜氏を中心とした酒造りが当たり前でした。もちろん北川本家でも、福井より越前糠杜氏を招き入れ、代々その技術を伝承し、杜氏を中心とした酒造りを行ってきました。

しかし、昭和58年に「社員の皆で酒造りをする必要がある」と体制を一変。「お客様に手ごろな価格で味わっていただける良いお酒」を目指し、早い段階で切り替えを行い、土地や機械への設備投資、携わる方への均等な技術の伝搬に着手してきました。

一方で、酒の文化をきちんと残していかなければならない、と人間の手を介した昔ながらの酒造りを行っています。

幅広い方にお酒を楽しんでいただきたいという思いと、お酒の伝承という2つのこだわりが代々の酒造りに継承されているんですね。

新旧の造りが楽しめるこちらの蔵では、様々な道具を拝見することができました。

現在の蔵は、伏見の町を流れる大きな運河濠川沿いの広大な敷地にあります。事務所から少し歩いた先に、とても雰囲気のある木造の蔵が見えてきました。築100年以上は経っているのでしょうか。

蔵外観

火入れ器具
入り口では巨大なお釜がお出迎え

優に大人10人は入れそうな巨大なお釜は、蔵の移設の時に発見されたそうです。火入れ作業を行うのに使われていたこのお釜。お湯を沸かして、管の中にお酒を通して、火入れを行っていたそうです。
こんなものが眠っていたとは、さすがに老舗蔵。しかしそれ以上に、こんなにも巨大な釜を造りあげた職人の技術、そしてこれを使ってお酒を醸していた蔵人の技術に驚きました。またどんなに重労働だったことか、当時お酒造りがいかに大変だったかを感じ取ることができました。

乾蔵

さて、表のこの立派な5階建ての建物「乾蔵」。ここで、北川本家のお酒造りが行われています。

最上階の5階では、洗米、蒸し米、製麹が行われています。

蒸米

訪れた時は、蒸米作業の真っ最中。こちらの大きな機械では大量のお米が流れており、蒸米と冷却が行えます。

そしてこちらが醪のタンク。タンクの中に見える棒のようなものは櫂。コンピューター管理され醪を撹拌します。

醪

留添えと言われる最後の仕込みを終え、アルコール発酵が3週間近く進んだこちらの醪。まるで雪のようです。
今年の12月は暖かったため、地下水温も少し高めになったそうです。そこで、同じ地下水から作った氷を加え、細かに分量を計算し、温度調整を行ったそうです。
自然の力を利用して造るものだからこそ、影響を大きく受けるのだと感じました。

大きな設備を拝見した一方で、昔ながらの造りにもこだわりが。

斗瓶
この中に一滴一滴大切にお酒が搾られます。

「斗瓶取り」や「斗瓶囲い」などの名で知られる、こちらの斗瓶。斗瓶は最新の設備とは異なり、新品は使えません。斗瓶取りをするお酒は、特にお米を磨いた繊細な酒質なものが多いため、新品の斗瓶では由来する様々な匂いがつきやすくなってしまいます。
なので、使い古したもの、使い続けているものしか使えず、新たに欲しくても中古の斗瓶を他の酒蔵から頂いてこなければならないそう。ここ北川本家では現在30個ほどの斗瓶を使っていますが、割ってしまうと一大事。
とても貴重な道具なんですね。何でも新しいものが良いわけではないということです。

袋しぼり

そして、こちらも昔ながらの搾りに使用する袋。この中に醪を入れて、吊るしたり(袋搾り)、畳んで重ねたりしてお酒を搾っていきます。こちらも匂いは厳禁のため、洗剤は使えません。丁寧に手洗い道具を大切に管理します。

■自然の恵みを感じる酒造り

大きな機械や昔ながらの道具を使って造られるお酒ですが、最大の要素は、水、お米、麹菌といった自然の恵みです。

こちらは種麹。初めて種麹を拝見しました!あまり嗅いだことのない独特な香りがします。こちらを蒸米に振り掛けることで、菌が発芽します。

種麹

酒造りは、一麹、二酛(モト)、三造りと言われます。大事な工程が山ほどありますが、何が一番かと言われば、やはり麹造り。お酒の酒質を決めるうえで、一番大事な工程です。
麹と酒母(酛)がしっかりしていないと良いお酒になりません。

麹にも様々種類がありますが、清酒に使われる黄麹の種麹にもいろいろあるそうで、例えば、味噌や醤油にも黄麹が使われています。

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清酒はデンプン質の多いお米を使用するため、デンプンを溶かす系の菌が使われます。そして、味噌、醤油はタンパク質を主とする大豆を使うので、タンパク質を分解する酵素が強い菌を使っているそう。

今回、見せていただいた種麹は大阪の樋口松之助商店が造るヒグチモヤシ。なんと種麹を販売している会社は日本には4社しかないとういうこと!
日本の発酵文化を支えるこの種麹屋さんは、業界では「もやし屋」さんと呼ばれるそうです。北川本家では、他にも京都の種麹を使用するなど酒質に合うものを選んで、使い分けをしているそうです。

きれいな真っ白の麹
きれいな真っ白の麹

そして、お米。こちらで使用しているお米は山田錦、五百万石など。元々の越前糠杜氏の影響もあり、長い間福井産のお米を使用してきたそうですが、現在、地産地消に着目し、京都丹州の山田錦や京都産五百万石も使用しています。契約農家さんと一緒に田植えのお手伝いもしているそう。

酒米、特に山田錦は栽培が大変と言われ、急に増産できるものではありません。農家の方が大切に作っていただいたお米を頂いてお酒を造るため、急に大量のお酒は造ることができません。良いものにこだわる程に、長い時間をかけていかなければなりません。

お米、お酒それぞれの造り手の努力によって、お酒が造られていることが実感できるお言葉です。

北川本家のお酒は、「やさしいお酒」。伏見特有の柔らかな水の影響はもちろん、その味わいは口当たりの優しい京料理に合わせて育まれてきました。
水、米、麹などの自然の恵みに加え、京都の地に根付いた長い歴史の中で、その味わいが造り上げてきたのでしょう。

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さて、今回ご案内いただいた細川部長のおすすめのお酒をご紹介。

やっぱり「富翁 祇園小町 純米吟醸」、そして「富翁 上撰 本醸造 寒造り」
それぞれの季節で楽しんでいます。

とのこと、皆さんもぜひ飲んでみて下さいね。

そして出来立ての味わいを楽しみたい方には、こちらがおすすめ。
アンテナショップ「おきな屋」さん。

おきな屋

蔵に隣接すするこちらのお店で購入できる、その場で瓶詰の「量り売り」が目玉です。
その季節のおすすめを目の前で瓶詰めしていただけます。

量り売り

酒処伏見の老舗蔵の味わいをぜひお楽しみください!

最後に、北川本家の皆様、お忙しい中、取材ご協力いただき、有難うございました。

大好評の焼酎仕込みの梅酒。梅の香りが広がります。
完熟した南高梅を焼酎に漬け込んだ大好評の梅酒。梅の香りが広がります。
長期貯蔵焼酎の樽。年月を重ねた樽たち。
長期貯蔵焼酎の樽。年月を重ねた樽たち。