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【お蔵探訪記】木村酒造に行って参りました。

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2017年11月、木村酒造に行って参りました。

木村酒造 秋田県湯沢市田町2丁目1−11

■歴史と実績を兼ね揃えた実力派

秋田でも有数の酒蔵が集まる酒処にある木村酒造。近年では2012年にIWC(インターナショナルワインチャレンジ)でチャンピオンサケを受賞し、世界一の日本酒に輝いたことでも広く注目を集めた酒蔵です。

IWC2012 チャンピオンサケ受賞トロフィー
IWC2012 チャンピオンサケ受賞トロフィー

その歴史は古く、創業は元和元年(1615年)と400周年を迎えた秋田で2番目に古い酒蔵です。

創業1615年
創業1615年

長い歴史の中で受け継がれる技術はその昔から高く評価されており、蔵内には大変古い賞状から新しいものまでズラリとその証を見ることができました。

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秋田県知事賞

このように高い技術を持つ木村酒造が生み出すお酒は、秋田の軟水の特徴が良く表れた優しいお酒。
現在、代表銘柄は「福小町」ですが、明治の時代には「男山」と銘打っていたそうです。しかし当時の天皇が湯沢に訪れた際に同伴された侍従長がお酒を召し上がられ、とても優しい味わいで女性的な印象だと賞賛されたことから「福娘」という名を賜りました。
その後、「小野小町」生誕の地である湯沢にちなんで「福小町」と現在の名に至ったということです。

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■新旧の技が織りなす秋田の美酒

蔵の中に足を踏み入れると、400年の歴史を通じた新旧様々な様子を目にします。
昔の酒造りの道具だけでなく日常品などの品々が所狭しと並ぶ姿は博物館のよう。特に目を引いたのは大きな穴。

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この穴は、その昔使われていた釜の跡なんだそう。長い間地中に埋まっていましたが、ある時、昔蔵で働いていた方が訪れ、「ここに釜場があった!」と仰ったことにより発見されたそうです。
まるで遺跡のような旧釜場を通り過ぎ、私たちが伺った際にはちょうど洗米の作業中。

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そこには初めて目にする洗米機がありました。専用のスパイラル状になったブラシでお米を傷つけないように優しく洗い上げます。

麹室でもまたまたお初にお目にかかる製麹装置。

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設定された温度に自動で送風などを行います。ただしこの温度設定も麹の種類や状態により非常に細やかな設定が必要であり、熟練の技があるからこそ。
麹の温度が上下する中、お酒の甘みのポイントとなるグルコアミラーゼが最も造られる温度は40~42度。この温度帯の時間をどれだけとるかによってお酒の甘みに大きく影響します。香りのある酵母を使用する際は負けないように。経験から生まれる知識で微調整を徹底します。

またその技術の源と言える昔ながらの蓋麹法によっても麹造りを行っています。

蓋麹法に用いる「フタ」
蓋麹法に用いる「フタ」

フタと呼ばれる小さな器に麹を入れ、空のフタと重ね合わせます。麹の温度変化に合わせて、上下を組み替えたり、前後を入れ替えたり。温度を下げるために、一段ずつずらして空気を通したり。この微妙な隙間が重要な温度変化に影響するため、ここでも熟練の技が光ります。

新旧の技術が入り混じる中、一際風情を放つこちらは仕込み蔵。

静寂の中佇むタンク
静寂の中佇むタンク

仕込み蔵は他施設に比べ古い造りになっておりますが空調設備も完備しております。当日は空調は動いておりませんでしたが、蔵内はひんやりと肌寒い空気に包まれ、昔の方々の知恵や技術の高さを感じずにはいられません。
木村酒造の仕込み蔵は大変珍しく、普通は別室にあることが多い酒母ですが、こちらでは蔵の2階で酒母造りが行われています。

2階にある酒母タンク
2階にある酒母タンク
酒母
酒母

酒造りは「一麹、二酒母、三造り」 文字通り木村酒造の「酒の母」となる酒母を頂いてみました。心地良い甘酸っぱさに出来上がるお酒への期待も高まります。

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仕込が終わり、搾られたお酒は瓶詰めへ。こちらの瓶詰め機、驚いたことに木村酒造ではこの一台で全ての商品を瓶詰めしているとのこと。

瓶詰め機
瓶詰め機

そして火入れです。瓶詰めされたばかりのお酒はまだ乳酸菌などが生きています。そのため加熱をするこことで殺菌し、また酵素の働きを留め、商品の安定をはかります。

火入れ
火入れ(お湯につけ加熱殺菌を行います)

こうのように様々な工程を経て、商品出荷となる際、大事な商品ラベル。
こちらでは全て手作業でラベルを貼っています。驚いたことに、ラベルを貼る位置を示す印などはありません。全て目測、そして早業。

手作業でのラベル貼り
手作業でのラベル貼り

しかし貼り終わった商品を見てみると、ズレはほとんどありません。まさに熟練の技を目の当たりにした瞬間です。

ズレのないラベル位置
ズレのないラベル位置

 

■自信を持っておすすめする味

多くの技、知識によって醸し出された木村酒造のお酒。主力商品を試飲させていただきました。

代表銘柄「福小町」 ご案内頂いた木村酒造 石川執行役員営業部長様
代表銘柄「福小町」 ご案内頂いた木村酒造 石川執行役員営業部長

なめらかに舌の上をすり抜ける非常に優しく、まろやかな味わい。特にこの「福小町 大吟醸」は、銀座の有名寿司店で使用されています。また大吟醸の金賞受賞酒は東京オリンピックの招致活動の際、プレゼンの場で当時の知事自ら振る舞われるなどかなりの実力派。

毎年発売する季節限定のお酒では「一度口にしたら、必ず次の年もリピートする」と石川部長も自信たっぷり。確かに、この味わい、そして蔵の造りを拝見すると、その自信も納得です。
秋田の水、米の特徴をしっかり掴み、その良さを存分に味わえる蔵の酒。これからも美味しいお酒を醸し、さらに長い歴史を刻み続けて頂きたいと思いました。

最後に、木村酒造の皆様、お忙しい中、取材ご協力いただき、有難うございました。