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【お蔵探訪記】あくがれ蒸留所に行って参りました。

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2018年8月、あくがれ蒸留所に行って参りました。

あくがれ蒸留所 宮崎県日向市東郷町山陰辛212-1

■新しい蔵から生まれる「ふるさとの焼酎」

あくがれ蒸留所
あくがれ蒸留所

宮崎県北部の大自然に囲まれる日向市東郷町に位置するあくがれ蒸留所。
東郷町に唯一あった酒造会社が廃業した後、地域復興のためにも「地元の素材を活かした焼酎をお届けしたい」という想いで平成16年12月、あくがれ蒸留所は当時「富乃露酒造店」としてその産声を上げました。

富乃露
富乃露

「ふるさとの焼酎」を目指し、一年一年焼酎造りを積み重ねていく中で、10年目の平成27年に現在の「あくがれ蒸留所」と社名を変更しました。

蔵を囲む山々
蔵を囲む山々

訪問当日は快晴の夏空。緑に囲まれた蔵で聞こえてくるのは、蝉の鳴き声と川のせせらぎのみ。東郷町の大自然を肌で感じることができます。
蔵の真横を宮崎3大河川の耳川が雄大に流れます。蔵はその耳川の伏流水を使用し、焼酎造りを行っています。
新しい蔵と言っても、地元に根付いた造りと伝統的技法へ非常に強いこだわりを持たれています。

■少量を丁寧に。愛情のつまった焼酎造り

現在、製造にかかわる方は2名。驚きましたが、少ない人員だからこそできる丁寧な造り。
仕込みの時期は一つの銘柄だけを一気に造るわけではありません。同時進行で異なる作業を行わなければならず、とても大変ですが、一つ一つの銘柄に愛情を持ち、全ての工程において丁寧さ持って取組んでいます。

蔵のこだわりは随所に見受けられます。
蔵にある機器は全て、「少量を丁寧に」という蔵の想いを汲み取った形で専用に設計されています。

オリジナル設計のドラム式製麹装置
オリジナル設計のドラム式製麹装置

こちらのドラム式製麹装置では麹を洗う、水に浸す、蒸す、冷却といった工程が行われます。
製麹中は寝ずの番。製麹装置のすぐ横にある当直室で泊まり込みで麹造りを見守ります。

大事に育てられた麹は管を通り、一階の三角棚と呼ばれる製麹装置へ。

三角棚
三角棚
上下から風が吹きつける
上下から風が吹きつける

上から下からと風が吹き込まれることで麹の香りが立ち、華やかな香りの焼酎が生まれます。

オリジナル設計の蒸留装置
オリジナル設計の蒸留装置

こちらの蒸留装置も常圧・減圧兼用のオリジナル。減圧蒸留は通常蒸留中密閉しておりサンプリングができませんが、こちらの蒸留装置は可能。味を確認しながら、調整ができる優れものです。

こちらが蔵最大のこだわりポイント

伝統の甕壺仕込み
伝統の甕壺仕込み
甕壺
甕壺

床一面に甕壺が埋め込まれています。あくがれ蒸留所では一次仕込は全て伝統的な甕壺仕込み。「少量を丁寧に」。一度の仕込みで2甕分を仕込みます。

そして目を見張った工程がこちら。見た目にもさわやかな「あくがれブルー」の一工程。

あくがれブルー
あくがれブルー
手作業で行われる飾り紐付け
手作業で行われる飾り紐付け

飾り紐の取り付け、ラベル貼りも全て手作業!ラベル手作業自体は珍しいことではありませんが、良く見てください。

一つ一つのラベル貼り
一つ一つのラベル貼り

そう、親亀、子亀と「あくがれ」のロゴと全て分割されたシールを各々貼られているんです。
通常、一枚のシールを貼るにも、斜めにならないよう、高さを揃えたりと神経をつかう作業ですが、3つのパーツを瞬時に貼っていく神業!
宮崎の海を連想させるブルー瓶を際立たせるだけでなく、やさしい味わいが伝わる透き通ったイメージが、この手間を惜しまない心意気により生み出されています。

消費者に美味しいものを、だけでなく、手に取る時のわかりやすさも伝える丁寧さも、一つの工程に表れています。

■蔵人おすすめ

左:杜氏 山本部長 右:営業 田原さん
左:杜氏 山本部長 右:営業 田原さん

杜氏3年目となる山本部長。少ない人数で随時様々な工程を進行しなければならず、一日中走り回らなければならず、仕込み時期にはいっきに5キロも体重が減るそうです。
焼酎造りは大変です。しかし形になってきて、「美味しい」という言葉を聞くと疲れも吹っ飛びます。
山本部長の一番のお気に入りは「日向あくがれ白麹」。ロックで頂くのがおすすめとのこと!

優等賞受賞の「日向あくがれ」
優等賞受賞の「日向あくがれ」

「日向あくがれ」シリーズは蔵の看板焼酎。白麹は昨年、黒麹は今年、熊本国税局酒類鑑評会で優等賞を受賞しました。

日向あくがれ黒麹
日向あくがれ黒麹

こちらはその黒麹が眠るタンク。とても良い香りが立っています。出荷が待ち遠しいです。

全てに目が行き届く範囲で、じっくり丁寧に焼酎造りをしているあくがれ蒸留所。
実直に伝統技法に向き合い、地元原料にこだわる姿は、蔵の歴史こそ短いですが、その分これからの飛躍に目が離せません。

最後に、あくがれ蒸留所の皆様、お忙しい中、取材ご協力いただき、有難うございました。