れいざん樽

【お蔵レポート】熊本県山村酒造に行ってきました。

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2014年8月「れいざん」でおなじみの熊本県山村酒造に行って参りました。
酒造りの季節は、10月の初めから春先。訪れた8月は、残念ながら酒造りは行っていませんでしたが、快く山村社長に蔵を案内していただきました。
今回は、そんな蔵の暖かい雰囲気を中心にレポートいたします。

山村酒造合名会社

山村酒造合名会社 熊本県阿蘇郡高森町高森1645
創業は宝暦12年(1762年)、九州のほぼ中央部にあたる阿蘇五岳のひとつ根子岳の南側に位置しています。阿蘇山より湧き出る清冽な伏流水を使用し、阿蘇の米、阿蘇の水、阿蘇の人によって醸しているまさに「阿蘇の酒」を造っている蔵元です。代表銘柄である「れいざん」は、神々が宿る山「霊山阿蘇」にちなみ命名されました。

【自然とともに生きる蔵】

南阿蘇鉄道高森駅高森町

最も印象深かったのは、その大自然。南阿蘇鉄道の終着駅「高森駅」があるここ高森は、標高540mにあり、真夏の九州とはいえ、とてもひんやりと涼しい空気に包まれていました。真冬になるととても厳しい寒さになるとのこと。この気温が美味しいお酒を造り出しているんですね。

蔵の周りには様々な樹木が植えられています。訪れたこの日は、今夏初めて酔芙蓉(すいふよう)の花が咲いたそうです。かずらもたくさん蕾をつけていました。

醉芙蓉column140909_06

蔵の中央には、けやき。丑寅の方角にあたる裏手には、お稲荷さんの横で木蓮が蔵を守っています。

column140909_07column140909_08

そして蔵を見守る「えべっさん」の横にたつ金木犀。この金木犀の花がつく頃、酒造りの始まりとなる「秋洗い」の作業が始まります。「秋洗い」とは酒造りの準備となる桶洗いや、器具の点検などを行うこと。
まさに酒造りの開始を告げる金木犀ですね。 えべっさんと金木犀このように山村酒造では、植物カレンダーとして四季折々の草花を愛で、自然とともに酒造りをする蔵元なんですね。
入口横にある山桜。山村社長が山村の「Y」の字に剪定されたそうです。ちなみに、この石柱の上部分も「Y」の字です。とってもお茶目ですね。
やまざくられいざん石柱

【町とともに歩んできた歴史】

レンガ造り煙突

蔵内にそびえ立つ、100年以上の歴史を持つレンガ造りの煙突。この煙突は、石炭を使わなくなった昭和47年頃から使われなくなりましたが、シンボルとして残っているそうです。

煙突だけでなく、先人の知恵が詰まった風通しを良くする2重構造の縦格子や、前の蔵の廃材を使った用水路など蔵内にはその長い歴史を物語る物がいっぱいです。

縦格子用水路

蔵内を見学していて感じた穏やかな空気。その源が山村社長のお話でわかりました。
町では「お神輿さんが通る」道を確認するため、傷んだ道などを皆で改修するそうですが、敷地内にある用水路も、その皆さんのボランティアで清掃いただくそうです。

湧き水氷

そして、阿蘇の湧水から作られるこの氷。町の皆さんはともかく、「とても縁起が良い氷」として近隣からも、学校の運動部の合宿や甲子園出場校も氷をいただきにいらっしゃるそうです。しかも、いつでも自由に氷がとれるように、ここは開放されているとのこと。
町の皆さんをとても大事にされていることが伺えました。町に流れる穏やかな空気の中、町全体でやさしい、おいしいお酒を造り出しているんですね。

【「れいざん」を生み出す自然】

湧き水湧き水試飲

「れいざん」のお酒を育むこれらの自然を実際に体感しました。
まず忘れてならないのが「水」。
阿蘇山から湧き出た水は、夏場でもとってもひんやりしています。一口いただいて、びっくり。とっても柔らかくて、「水」を飲んでいるという感じがしません。普段、水と言えばミネラルウォーターですが、大半はペットボトルに入っており、その独特の味に慣れてしまっています。しかし湧き出たままの新鮮なお水は、口の中に香りや雑味を何も感じることなく、すーっと喉を通過していきました。本当に良い意味で味がないのです。あまりの衝撃に、「うわっ」と声を上げてしまった程です。もちろん、そのお水で作った氷も格別。

萬延蔵蔵内

そして、気温。
お酒を貯蔵する「萬延蔵」に足を踏み入れるや、冷房でも入っているのかと思うほどにひんやりとしており、その温度は22度。元々涼しい地ですが、屋根裏を広くすることで熱をとり、真夏でも冷房いらずの涼しさを保ち、真冬になると5度程度まで下がるそうです。
まさに酒造りに適した地。
水と気候、土地そのものがお酒を造っているのだと実感しました。

【酒造りの環境に育まれ】

今回、杜氏補の山村純平さんにお話を聞かせていただきました。
中でも印象的だったのは、酒造りに携わるようになったきっかけでした。

杜氏補山村純平さん

-幼い頃から酒造りに囲まれ、登下校の時にも麹が香るような環境に包まれてきて、自然となるべくしてなった、ということだと思います。

それでも、保育士を目指したこともあったという山村さん。きっかけは、叔父である前社長の急逝でした。しっかりとその背を追った息子(現山村専務)の姿をいとこである山村さんは間近見ていました。

-自分にもいつその時が訪れるかわからない。代々受け継いだ酒造りを自分もきちんと引き継いでいかなければ、と確信しました。

大自然に育まれたものは「れいざん」のお酒だけではありません。自然、町、家族そして酒造りの歴史が相互に影響し合いながら、人を育み、その伝統が代々受け継がれているということが実感できました。

山村社長と山村さん
山村社長と杜氏補の山村純平さん

とても暖かい心をお持ちの山村さん。杜氏になる日も近いと思いますが、さらに美味しいお酒を醸して続けていただきたいと思いました。

そんな山村さんおすすめのお酒は「特別純米 阿蘇ものがたり」

特に燗酒がおすすめとのこと。

帰り際に、その「阿蘇ものがたり」をいただきましたので、次回は、いよいよ山村酒造のお酒、その味についてレポートします!現地で楽しんだお酒もご紹介!

お楽しみに♪

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