お蔵探訪記 株式会社花の露(2004年7月15日訪問)

豆豆しょうチュー太お蔵紹介

日本酒造りからのスタート

花の露は、1745年の創業以来約250年、良質な酒を造り続け、現在年間5千石を生産しています。昔は庄屋であり現金収入を得るために日本酒造りから始めたそうです。米と麦が豊富に取れる福岡県久留米市城島町で「花の露」に代表される日本酒造りの伝統がある蔵元です。
焼酎の製造を始めたのは、1981年のこと。第一次焼酎ブームの真っ只中で、減圧蒸留の麦焼酎や米焼酎を造り始めました。そして現在、花の露は焼酎の製造において右肩上がりの成長を続けており、年間約2千石を造っています。

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しそ焼酎、山の香

しそ花の露のブランドの一つ、しそ焼酎『山の香』。
2003年の秋に発売された『山の香』は「しそ」を焼酎の原料に使うという珍しい発想を業界に吹き込みました。
原料には、赤しそを使っていますが、このしその葉をどのように加工してもろみに混ぜ合わせるかが重要だそうです。しそといえば、独特の香りを持つ食材ですがその香りの正体は、しその葉に含まれている「油」。この油が焼酎へと移行し、まろやかな味を生み出します。
しそ焼酎『山の香』は、「新しい原料を使って美味しいものを造ろう!」という挑戦心から生まれた焼酎です。

筑後の酒どころ、城島町

日本三大河川の一つ、筑後川の中流域に位置する福岡県久留米市城島町。
この地に蔵を構える花の露には、お蔵をそのまま展示館にした「酒資料館」があります。築200年以上という城島町最古の建物の中には、長い間の酒造りの伝統が凝縮されています。工場見学も一緒に行うことができます。
また毎年2月11日にはこの蔵元をメイン舞台とした「酒蔵まつり」が開かれます。
新酒のネーミングの募集や試飲会、それに加え地域の物産フェア等が同時に開催されます。そして毎年5月には「酒蔵寄席」と銘打って落語の上演がされ人々の笑い声で賑わいます。
どちらのイベントも酒の町、城島町を広く知ってもらおうと始められました。
花の露は城島町と共に発展している、そして地域に愛されている蔵元なのです。

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豆豆しょうチュー太焼酎びと

冨安 拓良(とみやす たくろう)さん

花の露 専務取締役 (取材時)

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商社マンからの転身

3年半前まで東京の大手商社に勤めていた冨安専務。当時は、あちこちを飛び回って忙しく働いておられましたが、城島町に戻ると時間の流れがゆっくりしていると感じられるそうです。
「商社というのはモノやサービスを売っていくらの世界だったわけですが、酒造りの世界では『売ろう』という気持ちだけが前面に出過ぎるとかえってよい結果が得難いような気がします。それよりも納得できるものを妥協せずに追及していくことで、結果的にお客様に共感して頂くというプロセスが大事な事だとようやく気付きました。」
どの分野においても、最善の策を見つけ出し、全力で取り組んでいる様子が伺えます。研ぎ澄まされた感性で焼酎造りに従事されている印象を受けました。

芋焼酎を開発する

お蔵の裏手には、広々とした芋畑が広がっていました。この芋を使い2002年より試験的に芋焼酎を製造しています。日本酒造りでは長い伝統がある中で、次へのステップアップとして注目したのが福岡県では新しい分野である芋焼酎でした。
「焼酎の造り手として新しい事にチャレンジしたい気持ちから始めました。我々はさらに勉強を重ねることで、長い歴史を持つ焼酎の蔵元様にあらゆる面で追い着いていきたいです。蒸留は減圧法、常圧法どちらでも試しています。上品な味に仕上げようと試行錯誤している最中です。」
地元で栽培する芋を使うことにより、本場鹿児島の芋焼酎とは差別化を図っています。その違いは土壌。土が違うと芋にも違いが出ます。鹿児島は大半がシラス台地で覆われさらさらした土質であるのに比べ、福岡の土は粘土質。花の露の芋焼酎はどんな味に仕上がるのでしょうか。大変興味深いです。

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焼酎造りへの思い

焼酎造りへの思いを伺いました。
「培った技術を途切れることなく維持していきたいです。しかしその技術以上に大切なのは、気持ちを込めて一生懸命造る事です。どれだけ長い間人々に愛される焼酎を造れるかがポイントだと思います。」

まだまだ気持ちを込めることが足りないと話されていました。これは、どこまでも高めることができる心得ですね。

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これからの焼酎業界を斬る!

「現在のようなペースでの焼酎市場の拡大は、いつかは限界が来ると思います。しかし、今のように業界が活気付いているうちに各蔵元がプレミアム的な商品開発に偏ることなく、レギュラークラスの商品の品質の向上を目指していけば、焼酎ブームの終焉は避けられると思います。」
花の露のこれからの焼酎造りについても語って頂きました。
「どこかで飲んだことのある味では意味がないと思います。『旨い!』と思えば使ってはいけない原料はないと考えています。」
どこにもない味を求め果敢に挑戦しています。

 

山城 敬一(やましろ けいいち)さん

花の露 取締役製造部長 (取材時)

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焼酎造り今昔を語る

花の露の焼酎造りを一身に引き受けている山城部長。黙々と仕込みに取り組んでおられました。
「焼酎の長い歴史から見ると、社会的背景、技術の向上等で製法や取り組みが異なってきたのは当然だと思います。まだ20数年しか焼酎造りに携わっていないのですが当初は清酒が淡麗辛口化の時代で、その延長線上に焼酎を位置付け淡麗な酒質を目指していました。現在では、きれいな中に旨みのある味に取り組んでいます。」

山城部長のこだわり 

「原料の品質や製造方法を吟味し旨味のある柔らかい味を提供することを大切にしたいですね。食事をしながらおいしく頂ける焼酎を造りたいと思います。本格焼酎は清酒と同じく、食中酒として親しまれています。近年の食生活の変化に伴い、料理との相性がますます高まってきたのではないでしょうか。」
焼酎が身近な環境の下で、愛され続けることを望んでおられます。美味しい焼酎を造ろうとする思いには、山城部長のお人柄に反映される優しさが込められています。

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焼酎造りにおいて気をつけること

焼酎の製造工程は大きく分けて、発酵工程と蒸留工程から成りますが、どの工程でも気を緩めることなく携わっています。
「発酵の工程では使用する原料に合った原料の処理、使用する種麹の性質に合わせた温度管理に気を付けています。一定の品質の麹や主原料をもろみに供給しなければならないのです。
蒸留工程では、目的とする酒質に適した圧力や温度の選択に気を使いますね。特に蒸留の後半はより気を使います。」

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焼酎ファンへひとこと

「本格焼酎は単式蒸留により多くの成分を含み、しかも原料や製造方法によりバラエティーに富む奥深い香味の蒸留酒です。お好みの飲み方で食中酒として親しんで頂き生活の潤いとして欲しいです。」

豆豆しょうチュー太焼酎紀行より

自由な発想で取り組む

花の露を訪問した日は、太陽がじりじりと照りつける真夏の暑い日でした。そんな天気と同じように花の露は、熱い思いで酒造りに携わっています。
これまでの既成概念に捉われない新しい発想で焼酎造りに取り組んでいると強く感じました。芋焼酎造りにチャレンジする等、現状に甘んじることなく発展しようとしています。
「焼酎造りには制約がない。」と冨安専務は語っていましたが、まるで未知なる挑戦を楽しんでいるかのようでした。新しい風を焼酎業界に吹き込んでいる花の露。これからの活躍も期待しています。

素敵な庭園もありました。
素敵な庭園もありました

お忙しい中取材に応じて下さった花の露の皆様方、ありがとうございました。

2004年7月15日 焼酎紀行取材チーム