お蔵探訪記 研醸株式会社 (2007年3月14日訪問)

豆豆しょうチュー太お蔵紹介

三井郡大刀洗町にある研醸

創業は昭和58年で、福岡県の清酒蔵の井上合名会社と山口酒造場の共同出資で設立された焼酎蔵の研醸。福岡県の筑後平野を流れる筑後川の中流域北岸に位置する三井郡大刀洗町にあります。

人参や焙煎麦などを原料とした焼酎やリキュールを主力に製造
し、他社との差別化を図っています。年間約1,300石を製造・販売しており、敷地面積200坪、従業員14名と小さな蔵元ながらも、原料や麹造りこだわった丁寧な酒造りを続けている蔵元です。

筑後川と酒造りの歴史

西に背振、南に耳納、北に宝満の山並みを望む福岡県三井郡。広野には筑後川を始め、大小9本の河川が流れ、田や畑、人々の暮らしを潤しています。大分県九重連山と熊本県阿蘇外輪山に源泉をなす筑後川は、九州一の大河!豊かな軟水と筑紫平野の良質米に恵まれ、この三井郡では、昔から盛んに清酒造りが行われてきました。現在もなお、この地域では数多くの酒蔵が点在しています。

その昔、筑後川の水運は、桶や樽を作るための杉を運び、米を蒸す薪、石炭をもたらすと共に、出来上がった酒を色鮮やかな帆の船に載せて、広く各地へ送り出したそうです。筑後川の水運の利用によって、酒蔵が発展した歴史を持っています。

豆豆しょうチュー太焼酎びと

井上 茂康(いのうえ しげやす)様

研醸株式会社 代表取締役(取材時)

笑顔が素敵な代表取締役、井上様にお話を伺いました。

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社名の由来

社名である「研醸」は変わった名前ですが、何か意味があるのですか?
「はい。社名の「研醸」は日々「研」究を重ね、「醸」造する酒造りを目指したいという想いから、名付けたんですよ。
『地道な作業をコツコツと続ける事で、良いものが生まれる』。当たり前の事ではありますが、そういった酒造りに対する真っ直ぐな想いが込められています。 研醸を創設して約24年になりますが、この想いは当時から変わらずに、我が社の社風として根付いています。

人参焼酎の誕生

研醸の商品の特徴といえば何と言っても人参を原料とした商品の数々!原料に人参を起用された経緯をお聞かせ下さい。
「昔、三井郡の大刀洗町と北野町地区では盛んに人参が栽培されていました。しかし当時は栽培が難しく、収穫時にひびが入ったり、曲がったものは規格外商品として処理されていたんです。皆さんご存知のように、人参にはビタミンAやカロチンが豊富に含まれており、栄養価が非常に高い野菜です。捨てるのはもったいない、有効利用ができないかという農家の悩みがありました。そんな中、昭和56年に地元の農業高校教師で発酵の研究をされていた故・田中米実先生より、人参は多くの糖質を含み、発酵を活性化する特性があるという事を教わりました。
そこで、合名会社山口酒造場と井上合名会社が共同で研究・開発を進め、焼酎として商品化する事に決定したのです。二年後の昭和58年6月、両社の共同出資により、研醸株式会社が誕生。人参焼酎『珍(めずらし)』を開発し、販売を開始しました。」

商品のネーミング

研醸では、一風変わったユニークな名前の銘柄が多く、目を引きますが・・・
「商品のネーミングは、社内公募により命名しているんですよ。消費者の方々が覚えやすく、思わず手にしたくなるような印象に残るものを考えます。例えば、米焼酎『千年寝坊助』は、焼酎は寝かせる程柔らかな味を醸し出し、ますます美味しさが増すという点から名づけました。大切な記念日に呑む時に、寝かせていた焼酎を目覚めさせて下さいというコンセプトなんです。

焙煎麦の秘密

原料として使用される焙煎麦の特徴は?
「麦を焙煎すると、自然な麦の甘味と焙煎の香ばしさを漂わせる旨味が醸し出されます。また、煎る事によって麦の周りに含まれている二日酔いの原因となる脂肪分が取り除かれ、酔いざめ爽やかな焼酎に仕上がるんですよ。
焙煎麦は発酵作用が活発でないので、作業に手間が掛かります。発酵を促す為に、一次発酵と二次発酵で、普通大麦と焙煎麦を数回に分けて仕込んでいます。配合の度合いはとても重要ですので、企業秘密です!」

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焼酎ブームと消費者志向の変化

焙煎麦焼酎造りに着手する前は、麦焼酎を製造する蔵への見学を何度も重ねたという井上様。製品化するまで、様々な苦難がありました・・・
「麦焼酎の製造を考えていた時はちょうど1970年代後半、焼酎の第一次ブーム期に当たります。どの蔵元でも悩みの種だったのは、仕込み時に麦から出る特有の油「フーゼル油」でした。浮いた油を完全に除去するのは難しく、残ると焼酎の品質が低下してしまいます。フーゼル油を何とかして減らせないかと考慮した結果、焙煎するという製法を発案したのです。何度も改良を重ね、生産・販売に至りました。
製品化したのは1980年代後半。当初は第二次ブームと言われます。酎ハイやサワーなどのベースとして焼酎が使われ、ライトな感覚が支持を受けていました。そのような中では、焙煎独特の香ばしい風味は一般に受け入れられなかったんです。当時は極力風味を抑制する造りを目指しましたが最近では原料の風味を生かした焼酎が好まれるようになっています。これを機に、焙煎麦の特徴を活かした風味に改良しました。」

豆豆しょうチュー太焼酎紀行より

製造特許を取得

研醸がある大刀洗町は、水田と畑などのどかな風景が広がる静かな町・・・

そのような環境の中、研醸では筑後川沿いの水田・畑で栽培された人参と伏流水を使って人参焼酎『珍(めずらし)』を開発しました。その際に、製造法の特許を取得しています。

『珍』は、国産人参(主に県産)を主原料とした人参焼酎。人参を煮たり、炒めるときの特有の甘味が、減圧蒸留することにより、ほのかですっきりとした甘味とフルーティーな香りとして生まれ変わった、ソフトで飲み易い本格焼酎です。

このように自然に恵まれた土地だからこそ美味しい焼酎が造られるのですね。

研醸の挑戦!

研醸を訪問して、焼酎がバラエティ豊かな原料から造られる酒である事を実感。また、年々と変化する消費者の嗜好に対応する柔軟な姿勢も感じられました。

「ユニークな原料を使った酒をもっと多くの方々に知ってもらいたい」と語る井上様。その笑顔からは、商品に対する愛情が表われていました。全国で開催される様々な展示会に参加され、精力的にPR活動をされています。

商品について詳しく知られたい方は、研醸へご連絡、またはHPをアクセス下さい! この蔵から生まれた商品を見かけたら、是非手にとってご覧下さい。

研醸株式会社のホームページはこちら

お忙しい中取材に応じて下さった研醸の皆様方、ありがとうございました。                

2007年3月14日 焼酎紀行取材チーム