お蔵探訪記 株式会社紅乙女酒造(2008年9月3日訪問)

豆豆しょうチュー太お蔵紹介

日本初!胡麻焼酎にチャレンジ

昭和53年に福岡県久留米市田主丸町に設立した紅乙女酒造。年間約14,000石生産、従業員50名の蔵元です。紅乙女酒造は日本で初めて胡麻焼酎を製造した蔵。
約35年前、林田前社長は「ブランデーやウイスキーの様に味わい深く、今までにない焼酎を造りたい」と考え、果敢に取り組まれました。粟・稗・栗など様々な原料で何度も試作を繰り返した末、ようやく辿り着いた素材が胡麻。胡麻を原料にしたことで焼酎独特の臭みが消え、一層まろやかな味わいの酒質へ仕上りました。
胡麻は油脂・タンパク質・ミネラル・ビタミンなど食生活に欠かせない栄養素を豊富に含みます。体に優しく、高品質の胡麻焼酎は多くの人を魅了してやみません。

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紅乙女酒造 ゲストハウス

 

鮮烈に誕生した「胡麻祥酎 紅乙女」

蔵の代表銘柄「紅乙女」は、麦・米麹に胡麻を加え醗酵・蒸留させた世界で初めての蒸留酒。製法特許も取得しています。今までにない芳醇な胡麻の香り、円やかな味わいは発売当初から注目を浴びています。
「紅乙女」を商品化するにあたり、焼酎の“焼”を“祥”へ変更。祥の“羊”は人間と深い関わりのある「ひつじ」、“ネ”は「神」を意味します。“祥”という字は「喜び・めでたい・幸い」を表すものとして古来より伝承された文字です。愛飲する方々に“口福”を運び、おめでたい晴れの場で楽しく飲んで頂きたいという想いが込められています。

業界トップクラスの貯蔵量を誇る「山の貯蔵場」

筑後・耳納連山の麓にひっそりと佇む「山の貯蔵場」。紅乙女酒造の広大な敷地内には複数の貯蔵施設群が立ち並びます。ここには試飲コーナー・販売所のゲストハウス、安土桃山時代の家屋を再現した休憩所をはじめ、様々な施設が併設されています。
シャラント型蒸留器(フランス製)を設置した「アランビック蔵」、「樫樽貯蔵庫」、ホーロータンクで貯蔵する「第3貯蔵庫」、素焼きの琉球甕で貯蔵する「鶴亀蔵」、梅酒などを製造する「リキュール蔵」、ワインを製造する「巨峰ワイン」など。業界でもトップクラスの貯蔵量を誇ります。「山の貯蔵場」は地元の観光名所となっています。

アランビック蔵
アランビック蔵
リキュール蔵
リキュール蔵

 

地元 田主丸から世界へ羽ばたく

近年、紅乙女酒造は積極的に海外進出を模索しています。ベルギーで開催された2006年〜2009年度iTQi(国際味覚品質審査会)では最優秀味覚賞・三ツ星を4年連続で受賞という快挙を達成しました。審査は最初の印象・視覚・嗅覚・味覚・後味の順でジャッジされ、「紅乙女ゴールド」はどの項目も85点以上の高評価を得ています。また2009年は「紅乙女」がモンドセレクションにて最高金賞を受賞しました。2007年はフランスのリヨンで開催された「シラ国際外食産業見本会」に出展。業務用食品や調理設備など外食に関わる企業・団体約1800社(20カ国以上)が参加する中、“ジャパニーズスピリッツ”として出展。紅乙女ブランド、本格焼酎の普及に取組んでいます。

豆豆しょうチュー太焼酎びと 

守谷 豊一郎 (もりや とよいちろう)さん

株式会社紅乙女酒造 製造本部長(取材時)

酒類業界歴43年、紅乙女酒造入社25年目。焼酎の見識が高い守谷さんに紅乙女酒造の魅力を語って頂きました。

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ひらめきから生まれた胡麻焼酎

焼酎には多種類の原料がある中、なぜ胡麻という発想が湧いたのでしょうか?
「林田前社長はある日『三年以上経った麦焼酎は安いウイスキーより余ほど旨い』という言葉を耳にし、ブランデーやスコッチのように香り高い貯蔵酒を造りたいと考え、原料を模索しました。製造に携わっていると、口にする様々な食材の香りや味わい、食感に敏感になります。ある日家庭で胡麻を煎っていた時、香ばしく風味豊かな胡麻に注目。これ程に日本人の食に馴染みがあり風味のある食材を何とかして原料として活用出来ないかと考えるようになり、チャレンジが始まりました。
しかし胡麻そのものは発酵力が弱く、その製法は試行錯誤の繰り返しでした。現在の仕込みは、米麹で一次モロミを造り、発酵状態を見ながら麦と胡麻を加えて低温で発酵させます。そして出来上がったモロミを蒸留し、原酒を貯蔵庫で長期貯蔵させるのです。この製法は特許となりました。」

紅乙女酒造の胡麻

紅乙女酒造ではどのような胡麻を使用していますか。
「黒胡麻を使用しているメーカーが多い中、当社では白胡麻を使っています。タンザニアなどアフリカの発展途上国で化学肥料を使っていないものです。胡麻を焙煎しているのも紅乙女酒造の特徴なんですよ。焙煎することで胡麻の香ばしい風味が増し、深みのある味わいになるんです。胡麻は脂肪分や配合量を調整するのが難しく、試行錯誤を繰り返して安定した酒質に辿り着きました。」

地元酒を全国へ!

胡麻焼酎発売当時、焼酎を取り巻く環境はどのようなものでしたか。
「当社が焼酎製造に果敢に取組み始めた35年前、焼酎といえばとてもマイナーでローカルなお酒でした。今と違って製造技術が未発達の部分も多く、品質も現在と同等と言えるものではありませんでした。良く言えば個性的、悪く言えば馴染みのない地域では敬遠される“地酒”といった位置付けでしょうか。また物流面も大変な手間が掛かるものでした。そのような時代に、九州の焼酎を全国の方々に飲んで頂こうという発想。ましてや当時は類を見ない胡麻焼酎ですから、品質向上に加え営業・拡売活動も大変なものでした。今では皆様のお蔭で様々なコンクールで受賞するまでに成長し、紅乙女ブランドも広く認知されるようになりました。」

ゲストハウス 商品販売所
ゲストハウス 商品販売所
微生物と“喜怒哀楽”の対話を

この道ベテランの守谷様。最後に造りへの想いを語って頂きました。
「自然の恵みを大切に“造りの基本”を守り、当社独自の技術と真心をもって挑んでいます。よく焼酎造りが日本人の文化と言われるのは、風土の特性を生かし人の五感と手によって造られる所以です。焼酎に欠かせない酵母・麹菌などの微生物と“喜怒哀楽”の対話をし、技術に甘んじず五感を鍛えながら造りに従事したいですね。」

豆豆しょうチュー太焼酎紀行より

紅乙女酒造がある田主丸町は久留米市の東隣にあり、筑紫平野の南端に位置します。葡萄や柿などフルーツで名が知られる町。しかし昔から河童伝説があり、“河童の町”として知られている事をご存知でしょうか?田主丸町では町の至る所に河童のイラストや像が点在します。例えばJR久大本線田主丸駅は駅そのものが河童の顔にデザインされています。そしてホームには、大きな河童の像が!頭を掻きながらあぐらをかいて座り、列車が来るのを今か今かと待ち受けています。愛嬌ある河童たちが温かく迎えてくれる町、是非一度訪れてはいかがでしょうか。

お忙しい中、取材に応じて下さった紅乙女酒造の皆様方ありがとうございました。

2008年9月3日 焼酎紀行取材チーム