～焼酎紀行～｢本格焼酎&泡盛試飲フェスタin大阪｣報告

	今回は、地域経済の発展を担うエコノミストとして、鹿児島・宮崎の焼酎業界を研究している日本政策投資銀行の佐藤淳氏より、業界人とは異なった切り口で"本格焼酎ブーム"についてのお話をして頂きました。
	※講演会の内容を要約したものです。

本格焼酎ブームは今、三巡目を迎え｢東京型｣から｢大阪型｣へと変わりつつあります。
これは私が独自に名付けた言い方ですが、｢東京型｣というのは、小奇麗な焼酎バーなどで"幻"と呼ばれるような銘柄をワインのように少しだけ飲むイメージで、清酒に例えると特定名称酒のようなものですね。一方、｢大阪型｣というのは、安いけど本物であるということを追求、いわゆる鹿児島の飲み方とでも言いましょうか、清酒に例えると普通酒のようなものです。
この、言わば｢庶民&本物酒DNA｣をどう守るかということが本格焼酎ブームの行方を担っているのではないかと思います。

■佐藤　淳氏　略歴■
昭和37年　宮城県仙台市生まれ
昭和60年　東北大学経済学部卒業後、日本開発銀行
　　　　　　　(現・日本政策投資銀行)に入行
　　　　　　日本経済研究所などを経て現在に至る
平成13年　南九州支店　企画調査課長

本格焼酎がここまで台頭してきたのは、清酒が抱えているイノベーション(※)のジレンマとも関係しています。
清酒は、昔と比べると非常に美味しくなりました。そして質も上がりました。しかし、同時に原価も高くなり庶民のニーズを飛び越えて
しまったのです。つまり、技術革新が先走りしてしまい、消費者が飲みたいもの・飲めるものとは食い違ってしまったということです。
本格焼酎はまだ技術革新の途上にありますが、このイノベーションのジレンマをいかに克服していくかが、単なるブームに終わるのか、そうでないのかの鍵となるのではないでしょうか。

本格焼酎前線は着々と北上中です。本格焼酎前線とは、一人当たりの本格焼酎消費量が甲類を上回った地域とその時期を｢前線｣で表現したものです。1970年代後半には九州の一部で停滞していましたが、1999年には中部地方にまで達しました。その勢いは止むことを知らず、現在では首都圏まで届くほどです。このまま行くと、いずれ"ブーム"ではなく"文化"となるのではないでしょうか。

本格焼酎が文化となるためには、原産地表示や焼酎廃液処理問題に積極的に取り組む必要があります。
原産地表示については、各メーカーさんにおいても取り組んでいると思いますが、例えば｢南薩摩・本格いも焼酎｣認証マークというものがあります。これは、①鹿児島県産さつまいもを100%使用、②仕込み水に鹿児島県内の水を使用③南薩摩で蒸留瓶詰め、という三つの条件を満たすものに対して与えられます。文化というものは、地域との結び付きによって支えられるものであり、幸いにも本格焼酎は地元で生産される原料によって造られます。地域と共に発展していけるような体制を整えることが今後重要になるでしょう。
また、焼酎廃液処理問題ですが、芋焼酎一升を生産した場合、焼酎廃液二升分が出ることになります。現在、この焼酎廃液は、5割が肥料、1割が飼料、そして残りの4割が海に投棄されています。しかし、2年後には海への投棄が禁止となり、その分も飼料として活用することが課題となるでしょう。
本格焼酎が単なるブームに終わるのか、文化として定着するのか。
南九州の地域経済の発展を願いつつ、見守っていきたいと思います。

※イノベーション・・これまでとは異なった新しい発展。刷新。革新、新機軸。