~東北・福島の気候と風土を活かした酒造り~
人気酒造株式会社
福島県二本松市山田470番地
長年酒造りに携わってきたプロが集まってつくった新しい蔵。
日本酒は吟醸酒のみにこだわりっているから、吟醸酒では負けません。
歴史やしがらみに縛られず、本当に造りたい
“東北でしか造れない酒”を造っています。
今回お話を伺ったのは、代表取締役 遊佐勇人さんです。
「人気酒造」 外観
お話を伺った 代表取締役遊佐勇人さん
―どのような被害に遭われたのですか?-
蔵では停電、お酒の瓶が割れ10klのタンクが倒れました。周囲は高速道路の通行止め、土砂崩れによる4号線が埋まる大惨事となっていました。
暗闇の中での作業は困難と言うことで、早々に社員は解散しました。そして原発事故が起こりました。4日間は電気が来なかったため、まったく仕事ができず、電気が来た時は、仕込み中だった麹はすべてだめになっていました。それからまずガソリンが無い、注文があっても運送が出来ない、と言った状態が続きました。そして、3月11日には5センチ程だった事務所下のひび割れが、その後の余震と雨でさらに開き、大型トラックの往来がある限り、土砂崩れが免れないとの宣告を受けました。
すさまじい揺れは、10klのタンクも倒れるほど
地震の影響で割れたお酒の瓶
震災当初は、沿岸部に比べれば被害と言えないくらいと思っていましたが、半月が経過し、長期化が確実になった原発事故、地元の大口得意先の被災、生活に不安があり、いつ非難するかわからない状況で贅沢品のお酒を買う人は少なく、深刻な販売不振に陥った上に、海外からの輸入自粛、土砂崩れによる移転、と将来に不安を感じました。
―放射能被害について―
ご承知のように、いま福島は放射能被害で大変です。さまざまなところで検出されており、先が見えない状況が続いています。
ヨウ素やセシウムは金属なので、風邪の吹きだまりに花粉がたまるように、ほこりと同じようなものです。「染み込まない」と言われており、地下水の汚染もまずない、と言われています。しかし、困るのは原料です。春には地元の梅で梅酒を仕込んでいるのですが、梅は全部出荷規制になり、購入できませんでした。また、地元の麦で焼酎を仕込んでいるのは当社だけのようですが、仮にセシウムの検出量が500ベクレル以下であっても、大麦を使用したときにどの程度の放射性物質が含まれるかは実例がなく予測できません。その仕込んだ焼酎が外国で検査されて数値が出た場合、日本中の酒が輸出できなくなる恐れがあります。今年、酒米の種蒔が遅れ契約が間に合いませんでしたが、飯米は植えています。それを買わないでいると風評被害になってしまいますが、とはいえ、もし微量なりとも放射性物質が出てしまうと日本全国の酒蔵に迷惑を掛けてしまいます。県外のお米で仕込むという選択肢もあるのですが、そんなことをしていいのだろうか、地元の人達と闘っていきたいなと思っているのも事実です。実際に汚染されているお米を精米すると精米機が汚染され、タンクも汚染されてしまいます。洗うこともできますが、酸で洗うときれいにはなるのですがそれを捨てるところがないのが現状です。経験したことのないことが今後も続きます。
放射能被害や、土砂崩れの危機が迫る中、新しい蔵と出逢いました。安達太良山の伏流水の水脈調査をお願いすると、二本松の名水が出る古い岩盤の中で鉄分ゼロの理想的な仕込み水が出ると太鼓判を頂きました。そして築20年以上経っていますがバブル時にしっかり建てられ、震災に耐えた気密性の高い建物を所有していた企業から格安で譲って頂くことが出来ました。
輸出先からは、どうして移転するなら新潟や山形にしないのか?と聞かれました。
人気一は二本松の名水と環境からしか生まれないのです。
解体中の古い蔵
移転から 新酒の喜びまで
今回の移転では、事務所の自動ドアから看板まで使えるものはすべて新しい蔵で使用
唯一、持っていけなかった釜と麹室。釜と麹室は酒蔵の要です。
新蔵の和釜基礎です。最も理想的な蒸米が造れ、最も手間がかかり。最も重労働な伝統の和釜にこだわりました。
無事、今年の福島県産西会津産芋入荷!放射能は検出限界以下でひと安心。
2012年2月には、この芋を使った芋焼酎に出逢えます。
新しい蔵での新酒「初しぼり」の発酵も順調。(写真:左端)
「今年は設備の導入もあったからですが、米をすべて検査してからの仕込みになりますので、どうしても遅れておりますが、全力を尽くします。」とのお言葉。(写真:中、右端)
新酒「初しぼり」の発酵
仕込み風景(1)
仕込み風景(2)
放射能測定(二本松市役所測定)
心配していた数値は、移転の効果抜群で二本松でも最も低い数値と言うことで安心。(写真:左、中)
12月初旬には、私達もおいしい新酒頂きました!(写真:右)
工場付近の放射能測定(数値も問題なし)
工場内部の放射能測定(こちらも問題なし)
おいしい新酒 “いただきます♪”
―様々な復興活動に尽力されているようですが?-
福島の日本酒を多くの方が応援してくれるなんて思いもしなかった3月末、倒れたタンクにたまたま残ったお酒を、「全部流れてしまった」ものと考え、寄付させて頂きたいと思いました。このお酒は、震災にも負けず生き残った縁起の良い酒として、お陰さまで大ヒットし、すべて売り切れ、その中身のお酒代を全額福島県に寄付させて頂きました。
そして、岩手の友人の蔵元がテレビ出演したことで、状況が一変しました。お祭やお祝い事が自粛ムードだった頃、「被災地の蔵元の支援を!ぜひお花見を自粛しないで、お酒を飲んで下さい」との呼びかけで、首都圏を中心にお酒が売れ始めました。今では、この首都圏のお客様に支えられて、復興に向けて行動できるようになりました。
遊佐代表は様々な東北のPR活動をされています。
移転から 新酒の喜びまで
―被災地応援マルシェ 高円寺―
商品試飲販売はもちろん、問題ないにもかかわらず風評被害で苦しむ福島のりんご、きゅうり、味噌などを持参し、販売。
―香港政府観光局主催「Hong Kong
Wine and Dine Festival」参加―
香港で開催された世界各地のワインやローカルフードが出展するイベントで、日本・東北の安心・安全を世界にアピール。
―雲仙市訪問―
普賢岳災害に遭った長崎雲仙市に招待を受け、
これからの復興を考えるため訪問。
その他、全国各地で試飲販売や、シンポジウム等に参加されています。
福島第一原発事故は終息していませんし、30キロ圏内の避難民の方々は今でも二本松で生活し、市内には仮設住宅が続々と完成しています。まだまだこれからが復興の始まりです。
また今回の震災がきっかけとなり、東北以外の首都圏、そして九州の地でも東北のお酒を口にして頂くこととなりました。今は、被災地のお酒として、皆様に支援頂いていますが、被災地として忘れられた時、支援ではなく、お客様に選ばれて酒屋として生き残っていたいと考えています。
多大なる支援に感謝しつつ、小さな酒蔵ができることを努力していくだけですが、精一杯今を生きていこうと思います。
―ご協力、ありがとうございました。
まだまだ復興への道のりは遠いですが、今回のお話を通して、被災地で暮らす方々の復興への強い想いを改めて感じました。そして私たちに出来る支援の形は様々にあるのだと実感しました。一人ひとりの想いと行動が、大きな絆を生み復興への原動力となるのではないでしょうか。
一日でも早く、日本中が笑ってお酒を飲めますように!私達はこれからも支援を続けて行きたいと思います。
※上記内容は、2011年12月現在のものです。
全国酒造メーカー様復興支援活動(一部ご紹介)
メーカー名(五十音順) | 東日本大震災復興支援活動 |
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壱岐の蔵酒造株式会社 | 義援金や弊社のトレーナ-を寄付。 |
雲海酒造株式会社 | 義援金1.000万円の寄付。 雲海酒造グループ役職員から集めた100万円の寄付。 「蔵元 綾 酒泉の杜」への募金箱の設置(日本赤十字社を通じて寄付) |
大口酒造株式会社 | 社内の未使用の衣類、社内での募金集め・自社イベントでの収益金の寄付等 |
有限会社大山甚七商店 | 募金活動等 |
萱島酒造有限会社 | 義援金の寄付(酒造組合その他) |
菊水酒造株式会社 | 被災所や道の駅に鉢植えの花を寄贈 ふなぐち菊水、五郎八の缶1本につき1円を日本赤十字社をとおし寄付 その他、震災直後の避難所への物資支援、自治体への募金 |
菊正宗酒造株式会社 | 義援金500万円の寄付。 「酒蔵のかす汁」1,000食と「酒蔵の酒カレー」1,000食を寄付 |
株式会社喜多屋 | 平成23年3月13日(日)に毎年恒例の酒蔵開放の会場にて義援金募集。 お客様からの義援金190,404円・社員40,000円・当日の売上金から200,000円を義援金として3月16日に、西日本新聞民生事業団に寄付。 義援金は全額、日本赤十字社に寄託されました。 |
キリンビール株式会社 | グループ全体で取り組む東日本大震災の中期的な被災地支援として、各種グループ全体で60億円を拠出する3カ年計画を策定しました。財団法人日本サッカー協会をはじめとする関係組織や団体とともに復興支援策に取り組んでいきます。 |
月桂冠株式会社 | 支援物資として、ミネラルウォーター4800本(500ミリリットルを200ケース)、マスク6000枚を、3月15日(火)にお届け。 |
櫻正宗株式会社 | 酒米を蒸す甑(こしき)やもろみを搾り器に送るポンプなど11種類を宮城県の蔵元へ無償提供。 |
繊月酒造株式会社 | 2011年5月に開催した「繊月まつり」の売上を全額寄付。 東北地方への出荷の際、東北応援シールを添付。 |
高千穂酒造株式会社 | 関連会社を通じ、日本赤十字社へ寄付。 |
宝酒造株式会社 | 義援金として宝ホールディングスより3.000万円 被災地への大型タンクローリーによる給水活動 グループ会社の社員より災害募金を募り、義援金として寄付。 |
田崎酒造株式会社 | ボランティア要員、物品の寄付 |
種子島酒造株式会社 | 商品・お米300kgを寄付。 グループ会社全体で日本赤十字社を通じ義援金1,009,000円を寄付 |
本坊酒造株式会社 | 募金活動の実施。 |
萬世酒造株式会社 | 募金、寄付金 |
合資会社光武酒造場 | 酒蔵祭りの収益金の一部を義援金として寄付。 |
株式会社紅乙女酒造 | 震災後の町行事イベントでの弊社関連での売上金を義援金として、また、社内でも義援金募金活動として実施して、久留米市(行政)を通じて募金。 |