2015年9月、福島県会津若松市、末廣酒造に行ってきました。
末廣酒造株式会社 福島県会津若松市日新町12-38
会津若松は、周囲を山々に囲まれ、東西南北と川が流れる豊かな自然に囲まれ、冬には豪雪地帯となる、非常に日本酒造りに適した土地です。江戸時代会津藩の城下町として栄え、今もその面影が残っています。
末廣酒造の創業は嘉永3年(1850年)。この会津の地で、160年以上お酒造りを営み、全国新酒鑑評会で金賞を連続受賞する実力派の蔵元です。
現在、末廣酒造さんは2つの蔵で酒造りをしています。
まずはその一つ博士蔵をちょっと拝見。
遠くの山裾まで辺り一面に広がる田んぼの先にとても大きな建物があります。この博士蔵は、1996年に新設され、現在末廣酒造のお酒造りの拠点となっている蔵です。
そして、今回メインに訪問させていただいたのは酒造歴史館として人気も高い嘉永蔵。
ここでは、今も昔ながらの100%手造りに特化した酒造りをしており、分厚い白壁の扉の向こうに小中のタンクが並んでいました。
「嘉永」の名の通り創業当初からの伝統と面影が根付いている佇まい。
入口には、昔の酒売場の窓口がそのままに。
昔は、この小窓から代金や商品のやりとりを行っていたんですね。ふと昔の情景が目に浮かびました。
仕込み蔵の横には、昔の酒造りの道具の展示館や資料館があり、その先には明治時代のままの建物へと続いています。
かつて実際に住居とされていた、この昔ながらの大広間には、会津藩主松平容保や将軍徳川慶喜、そして野口英世の書など歴史の偉人達がこの地を訪れた様々な足跡がありました。
古酒貯蔵庫には、なんと1979年ものの大吟醸が。こちらには歴代の大吟醸が眠っているそうです。
大吟醸を造ることで、他のお酒にもこだわる
「これでいい」という妥協はありません。常に追求しています。
末廣酒造の歴史の深さ、そして会津の土地との関わりの深さが伺えました。
それもそのはず、末廣酒造は会津杜氏立ち上げの蔵。
それまで家内制で酒造りを行っていましたが、三代目が初めて県外から杜氏を招き入れたことにより、「会津杜氏」が誕生しました。「会津清酒」をはじめて謳ったのも三代目ということです。
非常に向上心溢れる末廣酒造さんをはじめ、高い技術を持ち合わせた会津の蔵々が集い、切磋琢磨し続ける事で、今の「会津の酒」が生まれたんでしょうね。
そして、嘉永蔵で見かけたもう一つの興味深いもの。「my酒造り」です。
一升瓶で40本、四合瓶で100本ほど、世界で一つだけの自分のお酒を造ることができます。
もちろん、タンクを買い取るという「オリジナル」だけでなく、なんと一緒に仕込みに参加することもできます。
「自分のお酒が造れる喜び」ということは、夢、心を売っているという浪漫なんです。
お客様の笑顔が返ってくる喜びは一入です。
とても嬉しそうに語って下さいました。
毎年、この「my酒」を楽しみに購入されているお客様もいるそうです。
手造り100%だからできるお客様への心遣いですね。
最後に、嘉永蔵の湧き水をいただきました。もちろん嘉永蔵の酒造りの仕込み水として使用されています。
ひんやりと透き通った、キメ細やかな味。この「きれい」なお水によって、末廣酒造のお酒の味わいを生み出しているんですね。
素材へのこだわりは、もちろんお米にも。
特に地元のお米にこだわり、幻の酒米「フクノハナ」を復活、使用したお酒や、合鴨農法を取り入れた無農薬のお米を使用しています。
この合鴨農法の田んぼでは、契約農家さん栽培の元、杜氏を初めとした蔵人、そして営業の皆さんなど社員一同でお手伝いするそうです。まさに一貫した酒造りですね。
もちろんその後、米造りのお手伝いをしてくれた鴨も皆で頂くそう。地元の飲食店さんなどにもおすそ分け。自然を大切に想い、地元を愛する造り手の皆さんの気持ちが伝わります。
歴史、技、人そして実力が兼ね備わった末廣酒造。その探求心で、今後も美味しく、そして人々に温かいお酒を醸し続けていただきたいです。
最後に、末廣酒造の皆様、この度はご協力ありがとうございました。