相良酒造

【お蔵探訪記】相良酒造に行って参りました。

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 2016年10月、相良酒造に行って参りました。

相良酒造 鹿児島県鹿児島市柳町5-6

■鹿児島市内唯一の蔵

創業は享保15年(1730年)、鹿児島市内唯一の造り蔵元です。造り酒屋と言えば、のどかな街並みをイメージする中で、相良酒造さんはマンションなどが立ち並ぶ住宅街と、少し意外な場所にあります。

こちらの地名は柳町といい、周辺には池之上町、小川町と水にちなんだ地名が多く、水が良いことが伺えます。周辺には多いときは15軒、数年前までは7軒の蔵元がありました。水も豊富で焼酎造りが盛んな土地でしたが、戦後の被害により方々に移転してしまいました。 そして唯一市内に残ったのが相良酒造。蔵の歴史は古く、現社長で10代目。創業当初は地酒を造っていました。鹿児島で最古の焼酎蔵は白金酒造さんですが、地酒造りまで含めると、相良酒造さんが最古の蔵元になるそうです。

しかし、戦時中お米の価格の高騰により、芋焼酎造りへ転換。戦後は全焼の被害に遭いましたが、それらの苦難を乗り越え、現在もこの地で変わらず手作業にこだわった焼酎造りを続けています。

■こだわりは「手」作業

では、相良酒造さんの焼酎造りを覗いてみましょう。

一年の造りは9月の大安から。300坪ほどの敷地で、5名の手により焼酎造りを行っています。車が行き交う大通りに面した入口より、一歩中へ入ると蔵の中は蒸したお芋の甘い香りが漂っています。

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まずは麹造りの種付けから。

ドラム式製麹装置
ドラム式製麹装置

蒸したお米に麹菌をふりかけ、万遍なく行きわたるよう回転しています。この日は白麹菌です。種付けをされた米麹は三角棚と呼ばれる装置に移動され、徹底した温度管理の元、麹菌を増殖させていきます。

三角棚 麹室にあたります
三角棚 麹室にあたります

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製麹には約42時間。こちらは約28時間経過した米麹です。

次は一次仕込み。米に対して120%の水が使用されます。温度管理がメインとなります。

一次仕込み 一日目
一次仕込み 一日目
一次仕込み 二日目
一次仕込み 二日目

そして二次仕込みへ。ここで主原料となる芋が投入されます。現在仕込み中の芋は紅さつま。

二次仕込み

活発に発酵しているタンクがいくつも並んでいますが、二次仕込みの状態をこんなに間近で見るのは初めて!目の前で、ピヒャピヒャと音を立てて泡が飛び跳ねます。その模様を見ていると、酒造りは生き物ということが実感できました。

二次仕込み 醪一日目
二次仕込み 醪一日目
二次仕込み 醪二日目
二次仕込み 醪二日目

3日目になると次第に発酵は落ち着き、熟成が進みます。5日目になると香りを閉じ込めるために、タンクをカバーで覆います。

二次仕込み 醪三日目
二次仕込み 醪三日目
二次仕込み 醪八日目
二次仕込み 醪八日目

8日目になると全く別物に!そして、二次仕込み9日目に蒸留を迎えます。

常圧蒸留器
常圧蒸留器

現在の温度は約90℃。二次仕込みのタンク一本を1日かけて蒸溜します。フツフツと湧き出る原酒。

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蒸溜したてのアルコール度数は37~8度。出来たてだからこそのとても甘いお芋の味を味わえます。

蒸留された原酒は、貯蔵、ブレンドされ製品化となりますが、ここからが相良酒造さんの最大の特徴です。

その1「手漉き濾過」

手漉き濾過
手漉き濾過

焼酎に含まれる油成分を手作業で取り除きます。特に旨味を残したい時や、どっしり感のある焼酎を造るときは、全て手作業で濾過を行います。12月~1月の寒い季節、油で真っ白になった上層部を少しずつ掬い出し、一日かかりで濾過を行います。

油分は同時に旨味成分ともなるため、その配分で味わいが変わるとても大事な作業です。数値では判断できない、杜氏の長年の技と絶妙な見極めが光ります。

その2「手詰めの製品化」

相良酒造さんで、最も驚いた工程は瓶詰。一升瓶以外の商品は全て手作業で瓶詰めされます。

ビン詰め

その絶技を拝見。一つ一つチューブを介し焼酎を少し多めに注入。そしてスポイトのような器具を使い不要分を吸い上げます。この器具は720ml用、900ml用とそれぞれにあり、高さを揃え、内容量を統一します。このような器具があることに驚き、そしてその作業を一本一本手で行っていることに2重の驚きです。

瓶詰
調整

通常の蔵元では、2,3分で何万本と瓶詰されるのに対し、こちらでは一日かかりで500本で精いっぱいとのこと。「今時こんなことやってるの?」と大半の方に驚かれるそうです。

全て手作業
全て手作業

もちろんラベル張り、袋詰め、異物混入の検品もすべて人によって行われます。 特に異物混入などは、2重、3重のチェックを行い細心の注意を払います。ベテランにしか任せられないとても重要な作業です。

異物混入検査

■杜氏の想い

「昔ながらの方法で、昔ながらの手作業で造る焼酎」ここだけは絶対に変わらないところ。 

そう語って頂いたのは杜氏歴6年の北原杜氏。

北原杜氏
北原杜氏

機械を導入するという手もありますが、原料を生かすも殺すも水が大事。この水が取れる地で、300坪と限られたこの土地では、今の方法がベスト。またそれ以上に、一本一本手を掛けることで、造り手の皆さん一人一人の愛情がこもる焼酎が生まれます。そこが相良酒造さんの最大の特徴です。

濾過、瓶詰と手作業にこだわる蔵の中で、北原杜氏の最大のこだわりポイントはブレンド。

手元で行う少量のブレンドと何千リットルが混ざり合うのではかなりイメージが変わってきます。最も気をつかう作業です。

手造りだからこそ、今までも色々な麹や芋を使ってみたりと原料の特性を生かした様々な焼酎にトライしてきました。しかし、やはり芋焼酎らしい飽きの来ないのは黄金千貫とのこと。

今後もぶれることなく、芋の旨味・香味がしっかり感じ取れる焼酎造りに励みたいとお話し頂きました。

北原杜氏の言葉をはじめ、蔵人の皆さんの仕事に臨まれている姿を拝見し、一つ一つを大切に造られている真摯な姿勢と愛情深さをしっかりと感じることができました。 大切に育まれた蔵のこだわりを今後も変わることなく、愛情あふれる焼酎造りを続けて頂きたいと思います。

最後に、相良酒造の皆様、お忙しい中、取材ご協力いただき、有難うございました。