2017年4月、勝屋酒造に行って参りました。
勝屋酒造 福岡県宗像市赤間4丁目1-10
勝屋酒造は、今「宗像・沖ノ島と関連遺産 群」世界遺産への推薦決定(17年5月当時)で大盛り上がりをみせる宗像市にあり、参勤交代の宿場町として栄えた旧唐津街道の赤間宿跡地の町屋の並びにあります。
創業は寛政2年(1790年)。代々宗像大社への信仰深く、看板にもある銘柄「楢の露」は宗像大社の神木「楢の木」より頂いたもの。鑑評会への入賞実績も多く、蔵自体も有形文化財として登録されているとても歴史のある蔵元です。
歴史情緒あふれる蔵
蔵の中に一歩足を踏み入れると、外見からは想像できないほど奥まで蔵が続きます。町屋の特徴である狭い間口に奥行きの深い造りです。4月下旬に入り酒造りは終わっていましたが、心地よい風が蔵の中を通り抜け、お酒の香りがふわっと鼻先をくすぐります。
その造りと同様、中にはめったにお目にかかれない昔からの家財道具や通り庭があり、ふと酒蔵であることを忘れさせるような風情を感じます。
早速、蔵の中を見学させて頂きました。
入ってすぐ、酒造りの要となる井戸がありました。
蔵には全部で3つの井戸があり、仕込み水は蔵の北側に位置する城山の伏流水を使用しています。こちらの水は硬水。硬水はミネラル分が非常に多いため、酵母が活性化しお米からしっかり味を引き出すという特徴があるそうです。いわゆる男酒と呼ばれる灘のお酒も硬水ですね。
この井戸の横には甑があり、ここで洗米、浸漬から蒸米の作業が行われます。酒造りで一番重要なのはお米の水分量。一番神経を使う場面がここで行われます。
そして蒸されたお米は、熱を冷まし麹室へ。甑から麹室までは奥へ向かって十m以上はありそうな距離。町屋ならではの狭い入口のため、重機が持ち込むことができず、皆さんで重たいお米を担いで運ぶそうです。こちらの蔵の造りならではの苦労ですね。
蔵の奥はさらに2区画に分かれ、お酒の眠るタンクが並びます。区画の境を超えるにつれ、気温は徐々に下がって行きます。もちろん冷暖房ではありません。蔵を囲む壁や、2階の空間など熱を遮る昔ながらの工夫が施された蔵だからこその特徴です。
タンクにかかる木のはしごや、櫂といった道具にも歴史を感じさせます。
さらに驚いたのは、蔵の中二階に佇む、こちらの部屋。
こちらは、その昔多くの蔵人さんがいたころの休憩部屋だったそうです。様々な蔵元を見学させていただく中で、お目にかかったのは初めて!まるでツリーハウスを連想してしまいましたが、その佇まいにとても驚きました。
新旧の融合
古き良き趣をそのままに、造り手は今年の仕込みより一新。若手の皆さんが担う新体制となりました。
現在造り手は5名。田中さんと内山さんにお話しを伺いました。
造りの面白さは、毎年全然違うこと。特に今年のお米は水は吸わない、すぐ乾くといった数十年に一回の酒造りが難しいお米でした。
しかし一度この難しいお米を扱えさえすれば、これからはどんなお米でも大丈夫!とお声を頂き、自信につながりました!
と、明るく前向きな言葉を笑顔で語っていただけました。
麹造りの際は、温度管理のためはもちろんのこと、心配で居てもたってもおれず、付きっきりだったというほど。
本当にお酒造りが好きなんだな、とじんわり心に響きました。
なかなか機械が導入できないからこそ、代々受け継がれてきたこだわりの手造りの技法。
新しい世代を迎えさらに磨きがかかって行くことと思います。
世界遺産登録決定を間近に控えた宗像への期待とともに、
こちらも新旧が見事に融合した蔵として今後のお酒造りにぜひ注目していきたいと思います。
最後に、勝屋酒造の皆様、お忙しい中、取材ご協力いただき、有難うございました。