焼酎紀行～本格焼酎試飲フェスタin福岡報告～

※講演会の内容を要約したものです。

■本格焼酎の歴史の歩み

私が本格焼酎に携わって52年、まずはその間の本格焼酎の歴史の歩みというものを簡単に振り返ってみたいと思います。私が河内源一郎商店に入社した当時、焼酎の原料には黒麹が6割、河内菌白麹が4割使用されていました。ところが、昭和20年代後半に麹の自由販売が認められ、当時の技術では辛口の焼酎しか造ることが出来なかった黒麹は廃れ、白麹が99％使用されるようになりました。
昭和36年、私は「河内式ドラム型完全製麹装置」というものを10年掛かりで発明しました。これにより、麹造りの大変さを軽減することが出来るようになりました。昭和47年には、それまで外国米しか使用出来なかった焼酎の原料に国産米の使用が認められるようになりました。このことで、焼酎の格が上がり、鹿児島県外への出荷が増えました。
昭和49年になると、そば焼酎、減圧蒸留の焼酎、イオン交換された焼酎が相次いで登場し、焼酎の種類が多種多様になりました。昭和60年代に入り、私は辛口の黒麹を甘口に変える菌を見つけました。黒麹を使用した焼酎が再び造られることとなり、愛飲者も増えました。
現在でも黒麹仕込みの焼酎は鹿児島で非常に人気があり、それが今の焼酎ブームの一端になっていると思います。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

■本格焼酎の魅力

ここからは、私の考える本格焼酎の魅力というものについてお話ししようと思います。本格焼酎の魅力を三つに分けてご紹介します。
1つ目は、自分の好みに合わせてアルコール度数を適当な濃度に変えることが出来るということです。日本酒の場合、水で薄めると味が水っぽくなりますが、焼酎は水で薄めて自分に合った度数を選ぶことが出来ます。
2つ目は、水の温度と質の違いによる焼酎の味を楽しめるということです。焼酎は、お湯割りや水割りなど割り水の温度によって味が変わります。さらに、割り水の水質によっても味は変わります。ミネラルの少ない軟水よりも比較的ミネラルの多い硬水で割った方が焼酎はおいしくなります。
3つ目は、焼酎の種類によっておいしい飲み方があるということです。例えば、芋焼酎の場合は旬の味というものがあり、製造後3ヶ月目のものを40度くらいの熱燗で飲むと、芋の新鮮な香りと濃い甘味を楽しむことが出来ます。また、古酒の場合はぬる燗で飲むと、キレの良い甘さを楽しむことが出来ます。
このように、焼酎というのは飲む人の好みに合わせて多種多様な味を楽しむことが出来、その魅力は無限大に広がっているのです。

■これからの焼酎業界に望むこと

私はこれまで、焼酎の種麹造り1本でやってきました。焼酎や麹と一緒に生きてきたと言っても過言ではありません。その経験から言えることですが、これからの焼酎業界には技能者を大事にして頂きたいのです。
近年、焼酎造りが機械化され杜氏さんの数が減ってきていますが、人間の技能や官能を活かし、そして造り手が楽しみながら造ってこそ、焼酎の独特の味わいというものも出てくるはずです。
私自身も今後、種麹の研究・改良を行い、消費者が色々な種類の焼酎を選べるようにしたいと思っています。

【山元氏略歴】
1923年12月19日生まれ
1943年旧制鹿児島高等農林学校農芸化学科卒業
1951年河内源一郎商店入社
1955年代表取締役に就任　　現在に至る

【株式会社　河内源一郎商店】
1931年、初代河内源一郎氏が自ら分離・発見した種々の麹菌を、種麹として製造販売を目的に創業。特に「河内菌白麹」は、本格焼酎製造用麹菌として全国シェア80％を占めている。
また1961年には、酒類や味噌醸造の製造現場に役立つ「河内式ドラム型完全製麹装置」の開発にも成功。
1996年には「麹の館」にて無添加の栄養性に富む新たな麹加工食品を開発・販売。