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【お蔵探訪記】佐藤酒造店に行って参りました。

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2016年9月、佐藤酒造店に行って参りました。

佐藤酒造店 埼玉県入間郡越生町大字津久根141-1

創業1844年(弘化元年)。秩父の山々につながる周囲は大自然に囲まれた人口一万人の越生の町で長年酒造りをしてきた蔵です。
年間の生産量は約500石。20代を中心とした4名で「目の行き届く量で丁寧に」手造りのお酒造りを行っている活気あふれる蔵元です。

■越生の恵みの中で

蔵の最大の特徴は、水。蔵の裏手には、日本観光百選に選ばれている黒山三滝を源とする越生川の清流が流れており、仕込み水はその清麗な伏流水を使用しています。

蔵の裏手に流れる清流。幼いころから泳いで遊んでいました。
蔵の裏手に流れる清流。幼いころから泳いで遊んでいました。

約5mもの深さがある井戸。蔵元の地下は岩盤地層のため、下から湧き出るのではなく、横から水が湧き出ています。

井戸

覗き込むと下まで非常に透き通っていることが、わかります。通常、井戸を掃除すると、若干の汚れが出てきますが、こちらの井戸は、全く汚れが付かないほど、水が清冽しています。
この天然水は軟水で非常に清酒造りに適した水。雑味も香りもなく、ピュアで透き通った天然水。飲むと口当たりがやわらかく、体に染み込みとても気持ちの良い水です。
この水こそが、蔵の特徴であるやわらかくてすっきりとした後味の良いお酒を産み出しています。

また、越生には関東三大梅林の一つに数えられる『越生梅林』あり、蔵の敷地内にも梅林があります。

梅林
梅酒

蔵で造られる梅酒(うめさけ)は、この自社梅林から採った梅のみを使用しています。梅の樹の手入れから、収穫に至るまで全て蔵の皆さんで行っています。
9月から5月にかけて清酒造りが終了するとともに、6月より梅の収穫、梅酒造りに入ります。
「自分たちで育てたものだからこそ、一番安全。」そう自身を持って梅林を紹介して頂きました。

『越生梅林』への想いは、蔵のブランド名にも表されています。創業当初のブランドは『魁雪』と『萬代橋』でした。
しかし、「この地で生まれるお酒だからこそ」という想いで現在の佐藤社長が20年の歳月をかけて、現在の『越生梅林』という商標を獲得しました。

■若き蔵人たちによる丁寧な酒造り

蔵人はたったの4名。杜氏の佐藤麻里子さんを中心に皆さん20代と非常に若い蔵人たち。その酒造りには、若さあふれるパワーと発想力、そしてお酒に真摯に向き合う姿勢がとてもよく表れていました。

甑

こちらの甑では、最大で一度に580kgのお米を蒸します。例えば、6000klのタンク一回の仕込みに使用するお米は、掛米、麹米合わせて約1t。甑で蒸され、放冷されたお米をタンクまで運ぶのは、全て4人の蔵人の手。
想像を絶するパワーに、麻里子杜氏は笑顔で力こぶをつくって下さいました。

そして、清酒造り最大の要となる製麹作業を行う、こちらの大きな麹室。

麹室天窓

天井には珍しい天窓があり、その開閉により、室内の気温、湿度が調整できるようになっています。一度麹造りの工程に入ると、温度管理は2時間ごと。夜通し付っきりの作業となる上に、天窓の開閉数センチが大きく室の状態に影響します。
非常に細やかな神経を使う工程であり、杜氏の感が最も光る工程を前に、蔵のお酒造りへの意気込みを感じます。

そして一風変わった発酵タンク。タンクの蓋が中央ではなく、やや端に設置されています。これは、人の手による櫂入れを効率よく行うため、片足を掛け踏ん張れるように特注となっています。

タンク

また、長い櫂を出し入れできるように天井も高くなっています。タンク口の並ぶ2階の床はあえて木製。鉄製の床の方が掃除がしやすいですが、温度管理がしやすいという点と、木のぬくもりが感じられるように木を使用しています。

木板

蔵で唯一機械に任せる火入れ作業。温度管理は大変な工程で、温度が低いと火落ちし良くない酒質になってしまいます。

火入れ

人の手が必要なところは徹底的に労力を惜しまず、機械で十分なところは機械に任せる。火入れの温度管理以外は全て手造りで行っています。

蔵の随所にみられる工夫やこだわりは、若い蔵人たちならではの発想力だと感じました。

■父から子へ 継承される酒造り

佐藤社長

現、佐藤社長は創業より6代目。そして、娘の麻里子さんは20代の若さで杜氏となりました。
昔から、蔵の直売店でお手伝いをしていた麻里子杜氏。お酒造りへの意識こそなかったけれど、幼いころからお酒は身近にあるものでした。お手伝いの際、「美味しいね」とまた買いに来ていただくお客様と接するうちに、興味がわき、「もっと良いものを造りたい」と意欲が湧いたそうです。
そんな中、麻里子杜氏が本格的に酒造りの道へ進む最大きっかけとなったのが、東日本大震災。ここ埼玉の地も、地震の影響を受けました。創業から170年近く経つ蔵の瓦は落ち、土蔵の壁も剥がれるなどの被害を受けました。雨が振り込んでくるような状態では酒造りはできない、と蔵を辞めようと社長は決意しました。
そこで「酒造りを続けたい」「私たちがやる」声をあげたのが、二人の子供たち。両親である社長とお母さんは反対しました。しかし先代である祖父母は、代々の酒造りを続けて欲しいと家族会議で4対2に意見がわれました。
しかし二人の熱意を汲み取り、やはり家の者でないと酒造りはできないと、蔵の存続を決意し、麻里子杜氏の理想の酒造りができる環境に改装しました。

もちろん、若くして娘が杜氏になることに不安はあったそうです。

佐藤社長

酒造りを学んだからと言って、基本通りにできるわけがない。必ず良いものができるとは限らない。そこからが杜氏としての必要となる感覚。
麻里子さんを見ていて、酒造りが本当に好きなんだと感じ、独自の面白い感覚を感じ、杜氏を任せる決意をしたそうです。

■理想の酒造り

佐藤酒造店のお酒は、全般的にすっきりとした酒質が特徴。これは前述にもある通り、水の影響を大きく受けています。

越生梅林 無糖 辛口
越生梅林 無糖 辛口

―麻里子さんが杜氏になられて、味わいの変化などはあったのですか?

昔は男酒と呼ばれるようなずっしりとした味わいのお酒でした。しかし、今は食中酒として楽しめるようすっきりとしたお酒を造っています。 どういうお酒を造りたいか、自分なりに考えて造っています。

―今後は、どのようなお酒を造りたいですか?

理想は、後味がすーっと入りつつ、もう少し口に入れた時のふくらみを持たせたいと思っています。今はそこを目指しています。

―お酒造りの面白さはなんですか?

同じお米でも毎回違う、お酒は生き物です。同じ造りでも、造り手によって味が違ってきますし、同じ人でも造り手の感情で変わってきます。毎回違うからこそ、楽しさがあります。

あまりお酒を飲めなかったという麻里子杜氏。いち女性初心者の消費者目線で造ったお酒が「まりこの酒」
飲みなれていないお客様が手に取りやすいように、小容量で、「日本酒」という雰囲気を前面に出さないデザインにしました。

佐藤麻里子杜氏

「ぜひ、女性やこれから日本酒を飲む方々に飲んでいただきたい。」

麻里子杜氏の直筆サインをラベルにあしらっています。

まりこの酒
まりこの酒

昨年2月に新装した若き蔵人たちの想いと工夫があふれる蔵。この蔵で、今後どんな新しいお酒が生まれるか、とても期待が高まります。
最後に、佐藤酒造店の皆様、お忙しい中、取材ご協力いただき、有難うございました。

佐藤酒造店蔵