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【お蔵探訪記】白牡丹酒造に行って参りました。

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2017年5月、白牡丹酒造に行って参りました。

白牡丹酒造 広島県東広島市西条本町15番5号

西条の町で隣接する白牡丹延寶蔵と賀茂鶴酒造、西篠鶴醸造
西条の町で隣接する白牡丹延寶蔵と賀茂鶴酒造、西篠鶴醸造

創業は1675年。蔵は名立たる酒蔵が隣接しあう日本三大酒処西条に位置します。
白牡丹のお酒は非常に特徴のある「後口さっぱりのまろやか甘口」。かつて、夏目漱石や棟方志功などの文化人に愛されたお酒は、広島の地で絶大な人気を誇っています。

「白牡丹」のロゴは棟方志功先生の彫刻文字
「白牡丹」のロゴは棟方志功先生の彫刻文字

その味わいを守り続ける最大の秘訣は、先人の産み出した「知識の財産」。

自社精米から一貫したこだわりの造りを支える設備の多くは自社開発で特許も取得しています。

そのほとんどを産み出したのが故.南専務です。
昔から酒造りの技術は「教わるものではなく、見て学びとり、何十年もかけて会得するもの」とされていました。

そんな中、南専務は酒造業界の後継者不足を危惧され、杜氏の技術を継承していかなければならないとの強い想いを持たれていました。

そして、白牡丹一筋で磨き上げた杜氏の技術に厳密な観察を加え、28年前、発酵管理ソフトを自ら作り上げました。
その頃世間では、マイクロソフトのwindowsがまだ出始め。その着眼点と考え方は類い稀なる才能であったことは想像に難くありません。

故南専務が生み出した自動製麹機
故南専務が生み出した自動製麹機

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この巨大な機械が、特許取得の一つ、H-MINAMI式自動製麹機です。丹念なデータ蓄積と解析により、温度・湿度・炭酸ガス(麹菌の呼吸量)を制御することで、昔ながらの蓋麹法(※)による麹と同じような麹をつくる機械が開発されました。
(※)麹蓋という木製の盆を用いて麹を作る方法

加圧蒸米機
加圧蒸米機

こちらも故南専務開発の加圧蒸米機。圧力により中のお米が滞留することなく均一に安定してお米を蒸すことができます。なんとこちらの蒸米機、圧力釜炊飯器の開発前に誕生したというから驚きです。

蒸米は、その後冷却機を通りますが、この冷却機も優れもの。温度3℃、湿度30%に保たれたきれいな空気が吹きつけられます。

エコキュートを利用し清潔な空気を送風
エコキュートを利用し清潔な空気を送風

仕込みタンクももちろん自社開発です。タンク内に見える温度計で管理をしています。温度の波が少ないほど、お酒にストレスがかかりにくく良いお酒が生み出されます。

タンク内に見える温度センサー
タンク内に見える3本の温度センサー
タンクがずらりと並ぶ姿は圧巻
タンクがずらりと並ぶ姿は圧巻

これらの英知が集結した蔵で造られたお酒は、他の蔵元からも「古くなっても美味しく飲めるお酒」と定評を頂くほど。

単にオートメーション化するのではなく、原理を追求したからこその高品質のお酒が、白牡丹を愛する多くのお客様に安定してお届けされています。

その高い質は、数々の受賞歴にも裏付けされています。

数々の受賞歴(一般の方も見学可能な見学室)
数々の受賞歴(一般の方も見学可能な見学室)
ワイングラスでおいしい日本酒アワード2017最高金賞受賞の山田錦純米
ワイングラスでおいしい日本酒アワード2017最高金賞受賞の山田錦純米

白牡丹では、天保蔵、千寿蔵、長春蔵、万年庫蔵の4つの蔵で製造を行っており、全国新酒鑑評会では平成27、28年と2年連続全蔵入賞しています。

今年度鑑評会で金賞を受賞された万年庫の杜氏、鹿島杜氏にお話しを伺いました。鹿島杜氏のお父様も杜氏をされていたということで非常にお酒造りに精通されていらっしゃいます。

鹿島杜氏
鹿島杜氏

今回の金賞受賞について、素直な喜びの気持ちを語って頂けました。

新酒鑑評会の出品酒に向け、「白牡丹」としての方向性は決まっている中で、いかに4蔵独自の技術を発揮できるか、各杜氏プライドと責任を持って酒造りに臨みます。
金賞受賞できたことは、正直に「やった!」という想いももちろんありますが、互いに技術の研鑽し合うことで、全体の向上につながっています。

鹿島杜氏は4杜氏の中で最年長。その確かな技術で後輩育成にも力を注がれています。

白牡丹では、酒造りの英知が集結した機器を備えた蔵である一方、手造りも行っている蔵でもあります。

その理由の一つに造り手の育成があります。素晴らしいプログラムを有していも、それを使いこなし良い酒を造る続けるためには、やはり良い造り手が必要です。
一から酒造りを学び、習得していく技術の伝承の場としても手造りを大切にされています。

また、機械化された蔵の中でも完全自動化にはしていません。
例えば製麹機です。
全て自動で出来上がった麹だけでは良し悪しの完全な判断が出来ません。途中経過の確認が重要になります。その過程で匂い、味、手ざわりを体に染み込ませていくことで、経験を重ねて行きます。

手造りの技術に裏付けされた設備の元、このように処々に人の手を介すことで、より丁寧なお酒を醸し、きちんと技術や伝統が継承されていくのだと感じました。

今後はさらに、様々なニーズや新たな試みに対応するべく少量での生産や、より良い品質を保つための設備投入など様々な挑戦を試みられています。

人、設備の向上を通し、業界全体の発展を顧慮されている白牡丹酒造。今後も広く愛されるお酒を造り続けて頂きたいと思います。

最後に、白牡丹酒造の皆様、お忙しい中、取材ご協力いただき、有難うございました。

白牡丹 万年蔵前
白牡丹 万年蔵前
西条の町にそびえたつ煙突
西条の町にそびえたつ煙突