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【お蔵探訪記】京屋酒造に行ってきました。

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2015年11月、宮崎県日南市、京屋酒造に行って参りました。

京屋酒造有限会社 宮崎県日南市油津2-3-2

蔵のある油津の地は、鹿児島県境まで20キロと宮崎県でも南東部に位置します。昭和初期には東洋一のマグロ基地として栄えた港町です。
創業は天保5年(1834年)と言われ、ここ油津の地で約180年、伝承の大甕仕込みにこだわり、伝統を重んじ焼酎造りを続けている蔵元です。

京屋酒造 蔵

造りをメインとする桜ヶ丘蔵と、瓶詰め・貯蔵を行う東郷蔵置場があります。
桜ヶ丘蔵は、原料処理の棟と仕込み蔵の二棟に分かれています。

原料処理棟

原料処理棟は焼酎を造る原料の準備をする所。一見、やぐらの様にも見えますが、一番上から芋洗い場へ芋を転がして、下にいる人が洗うように造られています。泥を落とす作業は丁寧に行わなければならず、手間がかかり、とても大変な作業です。

こちらで行われる芋の処理方法は3種類あります。通常は、ヘタを切るのみですが、特にこだわりの品には、皮を半分剥くしまむき(半むき)や、全むきの芋が使われます。もちろん、こちらも全て手作業なので、全むき芋は特に処理が大変ということ。

原料芋

京屋酒造の芋焼酎では、主に紅芋を使用します。芋焼酎と言えば、通常は黄金千貫を使用するので、珍しいですね。この紅芋の品種は「紅寿」と言い、子会社農園(アグリカンパニー)栽培と串間産の芋を使用します。

続いては、仕込み蔵へ。

コルニッシュボイラー

蔵に入るや目の前には一風変わったボイラーが。こちらは、コルニッシュボイラーという大変珍しい銅製のボイラーです。昭和中期までは、いろんな焼酎の蔵元にあったそうですが、現存ではここ京屋酒造くらいでは!?とのこと。柔らかな蒸気で蒸し上げるこの貴重なボイラーを使い、芋や麹用の米を優しく蒸していきます。

麹を造り、3日目から甕に移します。その後6日間発酵し、一次醪(もろみ)が出来上がります。この製麹から一次醪までの間、雑菌等が繁殖すると焼酎ができなくなるため、かなりの神経を使うそうです。なるべく人が入らないよう、別室の甕仕込み部屋にて管理しています。

そして、二次仕込みへ。

二次仕込 醪

原料芋を粉砕しながら一次醪と混ぜる工程を一気に行う特殊な機械で処理し、二次仕込み用の甕へ移します。その後、甕でじっくり仕込むこと10日間。攪拌機を入れずに、櫂棒を使い人の手で時折醪を混ぜながら、自然の力で発酵させます。

醪を甕の口まで入れてあるので、発酵している時は、ポンッ!と音を立てながら、まるで醪が生きているように、上へ飛んだり、甕の中を動き周ります。

この甕仕込みを江戸時代から受け継ぎ、京屋酒造の焼酎は全て甕仕込みで造られています。

続いての工程、蒸留へ。
蒸留器は、常圧が1基、減圧が1基。原料の特性を踏まえて使用する蒸留器を選びます。

減圧蒸留機

減圧蒸留器は、首が長く、まっすぐ天井まで伸びるタイプで、とても珍しい形です。特性は、すっきりときれいな味ができるそうです。しかし、すっきりし過ぎると良い旨味が飛ぶので、蒸留の調整が非常に難しいそうです。
蒸留は味の決め手。熟練者が行い、京屋酒造らしい味わいを醸しています。

そして最終工程となる瓶詰め。
京屋酒造では瓶詰めは別の場所、貯蔵タンクのある東郷蔵蔵置場で行われています。割水は仕込水が使用されています。仕込水以外で割ると、酒質が変わってしまい、せっかくの仕込の良さが出てきません。
瓶詰めは半自動で、手作業で行われています。

甕雫
甕雫 京屋酒造HPより

「甕雫」は甕の洗浄から瓶詰めまで全て手作業のため、とても労力がかかります。作業の方も非常に熟練しており、1個につき、およそ2分で蓋締めをしており、1日の生産はなんと1500個。手作業の良いところは、機械のように故障がなく、確実性が高いところにあるそうです。

一つ一つ丁寧に。全ての工程に京屋酒造の手造りへのこだわりが見受けられました。

そして、京屋酒造のもう一つのこだわり、原材料。
消費者に安心できる焼酎を届けたい、理想の酒質の焼酎を追求したい、という想いから、「農業生産から焼酎づくり」を掲げ、有機認定農場での原材料造りを行う革新がなされています。

芋畑
芋畑
そば
そば畑

子会社農園で所有する田畑は、芋畑9ha、田んぼ4ha。ここで、焼酎の原材料となる芋やお米などを栽培しています。まだ全ての生産品をまかなうだけの収穫量はないそうですが、子会社農園産農園以外は全て国産にこだわっています。
農場で使用する有機堆肥は約1年かけて作られます。芋は苗から。栽培する畑は、雑草をあえて抜きます。最初、雑草を抜かなかったところ、雑草に栄養を取られ育たなかったそうです。そして、お米はアイガモ農法で栽培。
有機は栽培に大変な労力がかかり、有機認定も審査に厳しいですが、京屋酒造ではこれからの焼酎造りを見据えて取り組んでいます。

また、「芋は生芋しか使わない。冷凍芋は一切使わない」とのこと。安定した焼酎造りを行うため、芋は17℃で定温保存されています。

栽培から保存に至るまで、その徹底したこだわりには、とても感銘を受けました。

良いものを造るために手間暇を惜しまない焼酎造り、原料にこだわった自然と環境に優しい焼酎造りを目指し、日々研鑽をされています。この真摯に焼酎造りに向き合う姿勢が、一品一品丁寧な味わいを生み出しているのだと実感しました。

京屋酒造 製品

これからも、美味しく安全な焼酎を造り続けていただきたいです。

最後に、京屋酒造の皆様、お忙しい中、取材ご協力いただき、有難うございました。